在庫を持たない出版方法で業界に革命を グローバルパートナーズのデジタルPOD出版事業とは
written by 紺野天地
グローバルパートナーズ株式会社(以下、GP)は、「若者と企業と世界をつなぐ」をビジョンとし、日本のGDP向上を目指して多様なビジネスを展開しています。
2022年4月に立ち上げられた業界改革事業部では、国内でも珍しい「デジタルPOD(プリントオンデマンド)出版」という出版方法を軸に、企業の課題解決を図っています。
GPが、出版という新たな領域に着手した背景には何があるのでしょうか。今回は、事業責任者の出口たくとさんに、「サブスク出版」と銘打った同事業について、立ち上げの経緯や強み、展望などを伺いました。
出口たくと(でぐち・たくと)さん
2018年04月 入社
2018年04月~ 回線事業部に配属
2018年07月~ YouTube営業部へ異動
2019年01月~ 一般社員からプレイングマネージャーへ昇格
2019年10月~ YouTube大阪部署再立ち上げ
2021年01月~ プレイングマネージャーから副統轄へ昇格
2021年01月~ YouTube新人教育部立ち上げ
2021年10月~ Webマーケティング事業部立ち上げ
2022年02月~ TARGETUBE事業部へ異動
2022年04月~ 業界改革事業部(サブスク出版)立ち上げ
GP入社前は、大手焼肉チェーンのエリアマネージャーやフレンチのシェフ、個人事業主を経験。GP入社後は営業を中心に活躍し、確かな能力と経験から事業部の立ち上げやマネジメントを担当することも多い。
現在は会社の副統括を担っていて、出版事業の責任者でもある。ちなみに「業界改革事業部」という名称は、出版業界を変えたいという思いから出口さんが付けた事業部名。
電子書籍出版のパイオニア企業とのタッグ
―――はじめに、デジタルPOD出版がどういった出版方法なのかお聞かせください。
すべての工程をオンラインで実施する、在庫を持たない出版方法です。発注されたタイミングで千葉県にあるAmazonの倉庫で製本が始まり、早ければ翌日にはホカホカの一冊が届く仕組みになっています。安価で出版できることや廃棄が発生しないこと、簡単に書き換えられることなどが特徴です。
―――GPで出版事業を始めた経緯を伺えますか?
当事業「サブスク出版」はゴマブックス株式会社との共同事業になります。ゴマブックスの嬉野勝美会長と当社代表の山本が20年来の戦友で、かつ山本の母方の実家が本屋さんだったりと、書籍にご縁があったことから「一緒にやりましょう」という運びになったと聞いています。
事業を始めた理由としては、大手で出版する際、経営者様との間に生じていた齟齬を改善したいというのが出発点です。POD出版という形態に惹かれたことも大きいですね。
ゴマブックスは、業界の中でも電子書籍出版にいち早く着手した企業で、AmazonでPOD出版が認められてるのって、7社だけなんです。
▲ゴマブックス嬉野会長(左)とGP山本社長(左から2番目)
―――「サブスク出版」の概要について教えてください。
出版の力で経営者様を支援する事業で、「営業に活用するため」「採用力を強化するため」など、目的は企業の課題に応じてさまざまです。
料金は月額8万円(初期費用別)で60回の分割払い、PRのための追加オプションも用意しています。一般的なライター付きの自費出版は600万円から1,000万円、場合によってはそれ以上ですから、相場に比べてお得な料金で書籍を作ることが可能です。
―――出版までの流れについて伺えますか。
まずは私たちで企業課題をヒアリングさせていただき、課題ごとに解決できるような企画を提案します。企画に合意いただけたら、ライターや編集者を手配してチームを作ります。ゴマブックスには、有名経営者の書籍を数多く手がけてきた一流のライターや編集者がそろっており、お客様に合わせてメンバーをアテンドするんです。
次いで、2時間ほどのオンライン取材を4、5回実施した上で、書籍としてまとめます。多忙な経営者様ご本人に負担がかからない流れになっています。
―――現在、どのくらいのペースで出版されているのでしょうか?
2022年5月の事業開始からの1年間で、合計約100冊です。1か月あたり8冊ほどのペースですね。
デジタルPOD出版事業ならではの面白さ
―――どういったお客様が多いのでしょうか?
中小企業の経営者様が中心です。特にベンチャーやスタートアップなど、勢いに乗っている企業の経営者様からご依頼いただいています。
―――出口さんが感じるこの事業の面白さについて教えてください。
自分たちから経営者にアプローチするので、「会いたい方に会えること」がひとつです。
あとやはり、出版のきっかけを作る仕事でもあるので、書籍が実際に世に出た瞬間は、何ものにも代えがたい喜びがあります。
私たちは、最初のヒアリングを終えた段階で企画書を作り、表紙案やデザイン案まで数パターンご提案します。「この企画がいいね、表紙デザインがいいね」と言っていただけると嬉しいですし、いざそれが形になって出版されたら、自分たちの子どものように感じます。これは本来、著者の方が仰るセリフだと思いますけどね(笑)
▲書籍出版にあたって撮影した一枚
―――もしこの事業に関わる上での難しさがあれば、お聞かせいただけますか?
本人の努力次第でカバーできる部分ではありますが、経営の知識がないと、そもそもお客様への提案ができないことです。企画を提案をする際、「経営上こういう課題があるから、この目的で書籍を出しましょう」というように、お客様のプラスになる企画を作りますから。
あと、交流会の中で出版したい方を探すこともあるので、交流会や会食での礼儀作法が求められます。
―――ちなみに、デジタルPOD出版事業の責任者を出口さんが務められた理由は?
昔から本が好きで、いつか本に関わる仕事をしたいと思っていたんですよ。社内の全体会議で社長の山本が、デジタルPOD出版事業の構想や考えを話していて「誰かやりたい人いない?」って聞いてくれたときに、「自分が絶対にやりたい」と真っ先に手を挙げました。
負けず嫌いのメンバーで高め合える環境
―――出版に関する知識やスキルはどうやって身に付けたのですか?
出版業界の経験があるメンバーはいなかったので、例えば「DTP」「面陳」という言葉も知らなければ、販売フローについても分からない。そんな知識のない状態でのスタートでした。
嬉野会長や赤井社長をはじめとしたゴマブックスの方々に教えていただいたり、競合調査をする中で他社の価格フローや業務フローをリサーチして「この会社ではこうやってるのか」と学ぶこともありました。
―――GPの人間関係も学びに良い影響を与えていそうです。
そうですね。現在、東京に3名、セブに3名の計6名で活動していて、負けず嫌いが多いので、東京・セブ間で良い意味で鼓舞し合っています。お互いが切磋琢磨し合う中で、個々の力が伸びた側面もありますね。
▲立場や年齢に左右されず、裏表なくコミュニケーションを取る
―――今後、デジタルPOD出版事業に惹かれて入社する方もいると思います。向いている人と、事前にやっておいたほうがいいことは?
向いているのは本が好きな人やメディア関連の仕事がしたい人。やっておいたほうがいいのはSNS構築です。
私たちは、FacebookをはじめとしたSNSを用いて、主に紹介やアウトバウンドでお客様とのつながりを作っています。ですから、投稿がない、あるいはフォロワーが少ないアカウントだと、どうしても怪しまれたりして、アポが取りにくくなってしまうんです。これは私たちが最も苦労した点なので、なるべく早めに取り組んでおくといいかと思います。
―――他にも事業に関わる上で大切なことがあれば教えてください。
広告事業に近いので、トレンドをいち早くキャッチできるよう、常にアンテナを張ることも大切です。広く浅くでいいので世の中の情報を収集しておかないと、経営者と会話したり、悩みに共感したりするのが難しくなってしまいますし。
ちなみに、過去に聞いた話ですが、マーケティング会社の一番のライバルって女子高校生らしいんですよ。彼女たちはトレンドをすぐにキャッチして、自分たちのSNSアカウントで拡散するからです。私自身も、直接本屋に行ったり、ニュースを見たりするのはもちろん、TikTokを見てトレンドを知ることもあります。
大手出版社の出版ペースを目指す
▲GPはメンバー主導で事業拡大を進めている
―――これまで書籍を発行したお客様とのエピソードで、印象に残っているものを教えていただけますか?
業務委託から正社員になったばかりのメンバーが初の商談に臨むことになって、その相手が某有名ドクターだったんです。私も同席しましたが、本人はきっと、相当緊張していたと思います。
そんな中で始まった商談は、「うん、やりましょう」と15分ほどで決まったんです。デジタルPOD出版の魅力を伝えて、納得してくださった上でのお返事だったので、ひときわ嬉しかったですね。その本は今年の3月に出版されて、さまざまな反響をいただいています。
―――これからのチームづくりについて展望はありますか?
会社全体としての展望になりますが、顧客の課題に対して最適な解決法を提案できるよう、現在、数多くの他社とのアライアンス(業務提携)を進めています。「この企業とこの企業をつないだらどうだろう」というように、当社が中間に入って、課題を抱える企業と課題解決に最適な企業をつなぐイメージです。
もちろんそうであれば嬉しいのですが、企業の課題を解決する方法って、必ずしも書籍である必要はないと思います。ヒト・モノ・カネのどこに課題があって、どのような解決策がベストなのか。それを当社のサービス全体、ひいては企業様との繋がり全体の中で見つけられる体制を整えていきます。
―――最後に、部署としての目標についてお聞かせください。
まずは、業界大手さんの自費出版が手がけられている「月間30冊」を達成することを目標にしています。その先の展望として、出版を絡めたメディア事業を始めたり、単行本だけでなく教科書や雑誌を発行したりと、さらなる展開につなげていきたいです。
【取材後記】
このインタビューの数日前、街中を歩いているとひとつの広告が目に留まりました。タイトルが気になってスマホで調べると、そこには「本書はグローバルパートナーズ株式会社との共同事業『サブスク出版』の作品」という文言が。SNSでも多くの声が寄せられていて、デジタルPOD出版事業が世に与えている影響を早くも実感しました。
この事業を通して出版された本が、中小企業の成長、ひいてはGPの目指すところである「日本のGDP向上」を加速させることを楽しみにしています。
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