不遇な体験を自分が断ち切る。郡山冷蔵製氷(グンレイ)の営業部長、伊藤さんが取り組む職場改善への思い

パープル

written by ダシマス編集部

「グンレイ」の愛称で知られる郡山冷蔵製氷株式会社。1917年(大正6年)に製氷工場として事業をはじめ、2024年で107年となる老舗企業です。自社の冷凍倉庫事業は冷凍食品の流通の一端を担い、私たちの生活を陰ながらささえてくれています。

前回は、同社の代表取締役社長である安藤昇さんにお話を伺いましたが、今回は執行役員 営業部長の伊藤和也(いとう かずや)さんにインタビューしました。自身の実体験もあり、自社の組織的な課題を解消すべく尽力されているという伊藤さん。

リアルな過去の状況を赤裸々にお話しいただきつつ、その上で伊藤さんは何を考え、今後どのようにしていきたいのか、その思いを語っていただきました。

執行役員 営業部長 伊藤 和也(いとう かずや)さん

執行役員 営業部長 伊藤 和也(いとう かずや)さん

2001年4月入社。入社のきっかけは、厳選して持ち帰った求人票を母親に見せたときの「明るく活気のある従業員がいるいい会社だ」というアドバイス。入社して10年の間に製氷や冷蔵倉庫の現場を経験。役員の急な退職により、引継ぎもなく未経験ながら営業部長に就任。

製氷・冷蔵倉庫・営業、さまざまな部門を経験

 

――まずは伊藤さんが会社に入社されるまでの話をお伺いします。どういった理由で郡山冷蔵製氷を選ばれたのでしょうか。

当時は明確にここに入社したいと思って決めたわけではなかったんです。

幼少期の私は祖父っ子で、小さい頃から祖父の仕事についていってました。そんな祖父は、私によく「仕事をする時は上司の言うことを聞き、真面目にやれ」と教えてくれていました。だから自分がやりたいことを理由に、職場を選ぶという感覚があまりなかったんですよね。

どこで働くことになっても、しっかりと上司や先輩の言うことを聞いて仕事をする。そう考えていたので、どこでどんな仕事をするかは重要じゃなかったんですね。

 

――おじいさんの言葉というか、教えを大事にされていたんですね。働き始めてからも、その考え方は大事にしてこられたのでしょうか。

そうですね。基本的には自分が分からない間は先輩や上司の言うことに従い、しっかりと仕事をしようと考えていました。

ただそれは、言いなりになるということではありません。

自分の考えや意見を述べることは必要です。言われたことを表面的に受け取るだけでなく、自分の頭で考え、指示の内容の意味を考えながら行動することが大事だと考えています。

 

――入社から今に至るまで、どのようなキャリアを歩んでこられたのか教えてください。

当社は主に氷の製造と冷蔵倉庫のサービス業を行っており、さらに燃料部門でドライアイスや灯油、LPガスの販売も手がけています。私は最初、氷を製造する部門に配属されました。氷の需要は季節性が高く、主に夏場に集中するため、秋口になると仕事量が減ります。そのため、製氷部門と冷蔵倉庫部門を季節によって行き来するような形で働いていました。

3年目くらいから本格的に冷蔵倉庫部門に異動しました。当社で一番大きい冷蔵倉庫である「本宮低温流通センター」の現場を経験した後、本社のある郡山の冷蔵倉庫に配属されたのですが、直後に東日本大震災が発生しました。その影響で物流自体が流れなくなり、しばらく厳しい状況が続きましたね。そんな震災から約1年後、突然所長を任されることになったんです。

さらにその1、2年後、「本宮低温流通センター」の副所長になり、社内の業務改革を任されました。具体的な指示があったわけではなく、しかも当時の所長も含め現場の人たちは改革に消極的だったので、なかなか難しかったですね。ただ、なんとか頑張って翌年にはその倉庫の所長に昇進できました。

その後、役員の退職に伴い、今度も突然なのですが営業部長を任されました。営業の経験は全くなかったのですが、積極的に電話や訪問をしてアポイントを取りつけ、取引条件なども一から学びながら、少しずつ理解を深めていきましたね。

営業部長になった当時は33歳くらいだったと思います。名刺交換をする際は「随分若いですね」とよく言われました。それでも一度名刺交換をすると、先方も役職者の方が対応してくれるようになるんです。

この頃から、他社の部長さんや経営に携わっている方々と関わることが増え、いろんなことを学ばせていただいたように思います。こうした経験を経て、現在に至っています。

 

会社は社会の公器――社会にとって大切な若者を責任をもって育てる

 

――伊藤さんは、これまで働いてきた中で社内に改善が必要だと感じ、現在も改善を続けていると伺っています。まずはその背景となった過去のお話から聞いてもいいでしょうか。

これまでの当社は、肉体労働者的な考え方が主流でした。特に私が入社した当時は、世代間のギャップが非常に大きく、若手社員と上の世代との接点も少なかったです。40代以上、主に50代、60代の方々が中心で、若い社員のことをあまり気にかけない傾向があったように思います。

教育のやり方も「背中を見て学べ」のスタイルだったのですが、正直なところ、若手からは上司や会社への不満を聞くことが多かったです。特に冷蔵倉庫の仕事では、正確さが求められるにもかかわらず、間違った商品を出荷してお客様に迷惑をかけるようなこともありました。仕事の質の低さに違和感を覚えましたね。

同期入社の7人のうち、現在残っているのは私を含めて2人だけです。多くの人が「先輩が教えてくれない」「声もかけてくれない」といった理由で辞めていきました。

 

――そんな環境下で、なぜ伊藤さんは続けてこられたのでしょうか。

私も辞めたいと思わなかったわけではありません。ただ、悔しさがあったんです。先輩が教えてくれなくても、自分で見て学び、積極的に仕事を覚えようとしました。

なにより、そんな人たちに「あいつは仕事ができない」とは絶対に言われたくなかったんですよね。だから反骨心で乗り越えてきた、というのはあるかもしれません。そうした思いが、継続する原動力になったように思います。

 

――そのような経験をされてきた上で、今の伊藤さんが大事にされていることは何でしょうか。

日頃、社長から言われていることですが、「会社は社会の公器である」という考えを大事にしています。私たちは、親御さんが大切に育てられてきた若者を預かり、きちんとした社会人に育てる責任があるということです。過去の経験から、若者への適切な指導とサポートが必要だと強く感じています。

具体的には、仕事をしっかりやるということの意味を広く捉え、単に作業をこなすだけでなく、品質や顧客満足度を意識することの重要性を伝えています。また、先輩社員の経験や知識を後輩に伝え、これまでの失敗を繰り返さないようにすることも大事なことです。

基本的なことから丁寧に指導し、一人一人の個性を生かしながら社会人としての基礎を固められるように意識しています。こうした取り組みが、働きやすい職場環境づくりの第一歩だと考えています。

 

マイナスの要素を取り除き、働きやすい職場環境を整える

――働きやすい職場環境を作るためには、どういったことが必要だと考えていますか。

前提として、働きやすさの定義は人によって異なると考えています。休むよりも仕事そのものが好きでたくさん働きたい人、仕事とプライベートをしっかりと分ける人など考え方はさまざまです。そのため、一概に「これが働きやすい環境だ」と決めつけないようにしています。

その上で言えることは、私がこれまでに体験してきた不快な思いを繰り返させないことが大事だということです。例えば、後輩の意見を無視する、部下とコミュニケーションを取らない、陰口を言うなどですね。会社がいい方向に向かおうとしている中、その方向性を歪めるような行為をなくしていかなければなりません。

また、組織内で起こるギャップや矛盾は大きなストレス要因になります。例えば、社長と部長の指示が食い違う、部長の指示に従ったら社長に叱られるといった状況は、大きな組織になるほど起こりやすい問題です。こうした組織内の不一致や派閥のような問題も、発生しないように気をつけています。

まとめると、働きやすい環境づくりの核は、いかに「マイナスの要素を取り除けるか」にあると考えています。それぞれの個性や、働き方に対する考え方の違いを尊重しつつ、誰もが不快に感じるような要素を排除することで、より良い職場環境が実現できると信じています。

マイナスの要素を排除した上で、社員たちが立場や年次を気にせず、自由に意見を言える環境づくりが重要です。

 

 

――例えば社内制度の改善など、ここ数年の間で具体的に変わったことがあれば教えてください。

評価制度(人事考課)の導入ですね。以前は上司の個人の裁量で決めていたようなものを、より客観的な評価ができるような指標を作りました。

また、個人目標の設定も導入しました。私自身も体感しましたが、仕事は漠然と取り組むよりも、具体的な目標を明確にした方が集中して取り組めます。仕事に集中できる環境を整え頑張ることで、社員自身の成長を促すことにつながればと考えています。

 

――この記事をご覧になる方に向けて、伝えたいことがあればお願いします。

実はここ数年、現場で働く若い社員が増えてきているんですよ。これはある意味、当社が昔の体制から変わってきていることを示していると捉えています。

また、当社の特徴として固定客との取り引きが多いです。積極的な新規開拓よりも、既存のお客様を大切にし、高品質なサービスを提供することに重点を置いています。顧客との関係性ができているので、関わる方の多くがフランクかつ柔軟にコミュニケーションができます。社外のコミュニケーションにおいても、比較的ストレスは少ないのではないでしょうか。

その他にも、女性の現場活躍推進のために業務の自動化や機械化を着実に促進しています。少子高齢化や人口減による労働人口の減少に対応するためにも、男女の生物学的性差を自動化や機械化で補い、誰もが平等に働ける環境づくりを目指しています。

まだまだ課題は多いですが、引き続き働きやすい職場づくりができるよう取り組んでいくので、興味があればぜひ気軽に連絡してほしいですね。

 

(取材・執筆:大久保 崇

 

郡山冷蔵製氷株式会社の詳細・採用情報はこちらから

ホームページ:http://gunrei.com/

採用情報:https://ten.1049.cc/tp/gunrei/search/city_7203

 

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