創業107年――郡山冷蔵製氷(グンレイ) の安藤社長が語る老舗の歴史と今後の ビジョン

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written by ダシマス編集部

「グンレイ」の愛称で知られる郡山冷蔵製氷株式会社は、1917年(大正6年)に製氷工場として事業 をはじめ、2024年で107年となる老舗企業。株式会社として、郡山市の100年企業第1号だそうです。自社の冷凍倉庫事業は冷凍食品の流通の一端 を担い、私たちの生活を陰ながらささえてくれています。 

今回は、同社の代表取締役社長である安藤昇さんに取材。これまでの会社の歴史、従業員の皆 さんが働きがいを感じられるための取り組み、そして未来のビジョンを語っていただきました。 

代表取締役社長 安藤 昇(あんどう のぼる)さん

代表取締役社長 安藤 昇(あんどう のぼる)さん

郡山冷蔵製氷株式会社4代目社長。2011年7月より社長に就任。総務出身として一貫して社内環境の整備や品質の向上、社員教育に取り組んできた。実家に戻ってきたときは食品を扱う倉庫とは思えない散らかりようで絶句したという。それを思うと今は見違えるほど。口癖は「ピンチはチャンス」

郡山冷蔵製氷をささえてきた物流・製氷事業の歴史

――まずは会社の歴史についてお聞かせください。

当社の前身は東北製氷株式会社と申しまして、大正6年に創業し、名前の通り氷の生産から事業が始まりました。氷の用途は家庭用冷蔵庫が中心で、当時は冷蔵庫の中に氷を入れることで物を冷やしていましたので需要が多く、各街に一つ氷屋さんがありました。また、使用する氷も池の水を凍らせて作った天然氷に依存していたので衛生環境も良くありませんでした。そんな中、弊社が氷を生産することで郡山の衛生環境は劇的に改善したと聞いています。

ですが、電気冷蔵庫が普及して家庭でも氷を作れるようになると、地元の氷屋さんは徐々に数を減らしていきました。そのころには冷蔵倉庫やドライアイス、燃料販売と事業を多角化していたため弊社は生き残ることができました。

振り返って現在に目を向けますと、氷の用途は増え、市場の魚の鮮度を保つのに使用したり、スーパーでかち割氷が売られたり、アイスキャンディーの原料になったりしました。当社もこれらを始めて、現在まで生産・販売を続けております。さらに福島県だけでなく、東京や関東方面など広域で販売するようになりました。東京は土地代が高いため、郡山で製氷して輸送しても採算がとれます。そのため、製氷業は首都圏向けの生産を続けています。

一方で冷蔵倉庫業・物流業は、郡山・本宮という立地を活かして事業を行っております。郡山や本宮は福島県の中心に位置しているため交通の便が良く、荷物や物資が集まりやすく県内の物流の中心地となっています。わが社は郡山と本宮だけでなく福島市にも冷蔵倉庫を持っているので県内の荷物を引き受けやすく、地域の皆様のお役に立てているのではないかと思います。

 

――100年以上事業を続けてこられた中で、特に困難だったことや取り組んできたことについて教えてください。

常に困難だと思えば困難ですし、チャンスだと思えばチャンスです。ピンチの時こそチャンスだと思って、自分を奮い立たせ、前を向いて進むようにしてきました。

具体的な例としては、約30年前のバブル経済の時期が挙げられます。今も似たようなところがありますが、当時も日本全国の企業が人手不足に悩まされていました。それでも冷凍製品の需要は多く、こうした状況を打破するために自動で冷凍製品を管理できる倉庫を建設しました。在庫管理もコンピュータで行えるようになりました。他にも工場の大規模化を図るなど、できるだけ少ない人数で大きな生産性をあげる努力を続けてきました。

また、約20年前にISO 9001(品質マネジメントシステム規格)を取得したのですが、これにより品質管理や顧客満足度の向上に本気で取り組むようになりました。これは当社にとって大きな転換点となったと思います。

ISO取得以前も品質向上には努めていましたが、十分ではありませんでした。しかし、取得後は全社的に意識が変わり、品質と顧客満足度の向上に真剣に取り組むようになりましたね。その結果、売上が一貫して増加し、お客様との信頼関係も強化されました。

例えば、全国で販売されている有名なアイスキャンディーの中の氷も、当社が一手に製造しています。これもISO取得後の取り組みによる成果だと考えています。

しかし、品質管理の面では、お客様の要求はますます高度化しています。以前はISO 9001で十分でしたが、現在はFSSC 22000(食品安全マネジメントシステムに関する国際規格)というより高度な規格への移行を求められています。これは過去10年ほどの間に、アルバイトの方が食品を不適切に扱っている様子が報道されるなど、食品製造への信頼性が下がってしまったことが背景にあります。

こうした背景から、単に品質の良い製品を作るだけでは不十分で、意図的に危害を加えようとする人々に対する防御策も必要です。このような時代の要請にもしっかりと応えるべく、製品の品質向上と同時に、こうした対策の取り組みも強化しています。

 

若い力を預かる責任。エルダー・メンター制度で寄り添う教育を実施

 

――今後、郡山冷蔵製氷をどのような会社にしていきたいとお考えですか。

まず大事なのは教育体制をしっかりと整えることだと思います。特に新卒で入社をされる方々は、社会人経験が浅い方が多いです。学校やご家庭から大事な若い力を託されたと思い、責任感を持って育てていく義務が我々にはあります。

そこで当社では、エルダー制度・メンター制度を取り入れています。エルダーは仕事上の指導を行い、メンターは精神面でのサポートを担当する。こうした役割を持つ2人が、新入社員に寄り添い成長をサポートする体制を整えています。

この制度は5、6年前から導入しました。昔は「先輩の背中を見て学べ」といった古い考え方がありましたが、それでは教育は不十分です。このような考え方は教える側の負担を軽減するための言い訳に過ぎません。新入社員を孤立させないためにも、しっかりと寄り添って教育する必要があると考えています。

当社の事業はBtoBが中心で、一般消費者にはなじみが薄いかもしれません。しかし、冷凍倉庫業は社会になくてはならない重要な役割を果たしています。私たちの仕事がなければ、安全な食品を消費者に届けることができません。コールドチェーンの一端を担う重要な存在だということを理解してもらえれば、やりがいを感じてもらえるのではないかと思います。

一見すると地味で目立たない仕事かもしれませんが、なくてはならない産業だと自負しています。今年で創業107年目を迎えましたが、長く続いてこられたのも、社会に必要とされる産業だったから、そして求められる品質に応えてきたからではないでしょうか。

現在、世界中の食べ物を季節に関係なく食することができますが、これも冷凍技術の進歩によるものだと思います。私たちの会社の使命は、豊かな食環境作りに貢献し、ひいては豊かな社会作りに協力することだと思っております。今後も人々の役に立つ存在であり続けたいと思っています。

社会貢献度の高い仕事に携わることで、社員の皆さんにも満足感と誇りを持ってもらえれば何よりですね。

 

今後100年に向けて――既存のお客様の期待に応え、新規事業の展開を

――今後100年に向けての展望についてお聞かせください。

製氷業や冷凍倉庫は今後も継続していきます。近年は地球温暖化の影響もあって氷の需要というのはますます増えています。夏に生産するだけでは需要に追いつかないので、冬でも生産して倉庫に備蓄することで対応しています。また、共働き家庭の増加などで手軽で便利な冷凍食品の需要は今後も増え続けるでしょう。現状の設備だけでは限界があるので、製氷工場や冷凍倉庫の拡充を進めています。

一方でそれぞれの事業に課題がありますので、それへの対処も進めなければなりません。製氷業の需要は夏に集中しておりますので、それ以外の季節では利益を出すのが難しいという構造があります。同業者に目を向けると製氷業からアイスクリーム製造へと転換した例がありますし、冷凍食品を作るようになった例もあります。わが社もそういった新しい分野への進出を視野に入れる必要があるでしょう。

――最後に、この記事をご覧になる方へメッセージをお願いします。

我々は新入社員の皆さんを、会社全体で育てていく姿勢を大事にしています。エルダー制度・メンター制度のみではなく、全社員が新しく当社に加わってくれた社員の教育に関わるよう呼びかけています。

手前味噌かもしれませんが、当社に入社した社員は幸せだと自信を持って言えます。親切丁寧な指導を受けながら、仕事を学び、人格的にも成長できる環境を整えているので、ぜひ興味を持っていただけたら嬉しく思います。

(取材・執筆:大久保 崇

 

郡山冷蔵製氷株式会社の詳細・採用情報はこちらから

ホームページ:http://gunrei.com/

採用情報:https://ten.1049.cc/tp/gunrei/search/city_7203

 

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