豊岡から世界へ!100年目ベンチャーの成長の鍵は「プラス発想」

レッド

written by 田野百萌佳

日本一のかばん生産量(※)を誇る「かばんの街」兵庫県豊岡市でかばん卸売業を営む株式会社ウノフク。2024年で創業103年目を迎えたウノフクさんが掲げるのは、「100年目のベンチャー企業として、伝統継承×革新力で世界に躍り出る」というビジョン。4代目代表取締役の卯野祐也さんは、「地場産業を背負って今後の会社の成長を目指す上で、グローバル化を考えないことはありえない」とおっしゃいます。今回は、地域貢献とグローバル化の結びつきと、その根底にある「プラス発想」の大切さを伺いました!

(※)2013年経済産業省工業統計より

 

地場産業を担うウノフクが、地域貢献にかける思い

ーーー豊岡でのかばん産業を通しての地域貢献ってどんなことだとお考えですか?

 

豊岡の知名度をもっともっと世界的にも上げていくことかなあ。

世界的に見ると革のかばんではイタリアのフィレンツェが有名だけど、豊岡もそういう「かばんといえば豊岡!」と世界的に言われるような立ち位置を目指さないといけないと思うんです。

 

ーーーおおお、、、スケールの大きさにいきなり圧倒されそうです!

そんな環境の中で、ウノフクさんご自身の役割についてはどのように認識していますか?

 

僕たちは専門商社なので、豊岡の技術で作られたかばんを世界に届ける「架け橋」だと思っています。

豊岡への恩返しという意味も込めて、豊岡のブランディングの一部を担う鞄の認知を広げることに貢献しなくちゃいけないんですよね。

 

ーーー地域貢献には恩返しの意味合いが強いんですね。具体的にどんな部分で恩を感じているのですか?

 

僕自身、たまたま地場産業をやっている家系に生まれて、子供の頃はおぼっちゃま扱いされるわけです。

なんで自分がこれだけ裕福な生活をできるんだろう?って考えた時に、もちろん一番は社員のおかげですが、豊岡の地でかばん産業をやっているという環境があって。

 

ウノフクは「豊岡」という土地にだいぶ助けられて100年続いてるんですよね。

かばんのバイヤーさんって、大体豊岡を知ってるんです。

「豊岡の企業です」と伝えるだけで新規のお客さんが増えたりするんですよ。

 

もともと、創業者でもありウノフク初代の卯野福吉さんは東京のかばん屋さんに奉公に出ていたのですが、そのまま東京で事業をやっていたら失敗していたかもしれない。そうやって遡って考えると、やっぱり自分は地域貢献をやらなきゃいけないなと思っています。

 

「グローバル化を考えないことはありえない」その意図とは

ーーー卯野さんご自身のルーツを遡った時に、地域貢献への使命感を感じたのですね。

それと同時に、これから先「グローバル化を考えないことはありえない」とおっしゃっていましたが、そう考えるきっかけとなるご経験はありますか?

 

僕、18歳の時に豊岡を出て、その後ニューヨークに留学したんです。

そこで豊岡という小さな街では感じたことのなかった、外から異文化のものを受け入れることが許容され、それ自体がそこの文化となる環境を目の当たりにして。

「豊岡のかばん」として認知を広めるために、まずは多様性に溢れた街に根付かせていかなければと思っています。

排他的な環境で批判されるほどメンタル強くないですし(笑)

 

それに豊岡市も実は今「豊岡から世界へ」という目標を掲げています。

僕のやりたいことと豊岡市の方向性がたまたま一致していて、一緒に取り組んでいきたいなというのも前提としてあります。

 

ーーーでは、「グローバル化を考えないことはありえない」とは、世界での知名度を高めるために、多様性に溢れた街に進出することが重要だということでしょうか?

 

実は、少し違って。

グローバル化って「単一化された価値観に向かっていくこと」だと思うのですが、これから100年、200年、300年後を考えると、グローバル化はもう終わってるんじゃないかなと考えていて。

何をするにしてもセグメントされた一角ではなくて、単一化された広い世界が舞台になってると予想できるんですよ。

 

例えば、僕たちの業界でいうと、マーケットが世界で一緒になるとか。

現在でもインターネットが発達して、どんなに遠くにある商品でも簡単に手に入る世の中になっていますよね。

 

僕は同族経営の4代目、つまり駅伝でいうと第4走者。ウノフクのバトンを次の走者につないでいくために、自分が引退するであろう2050年くらいまでにどういうことができるかと考えると、どこの国の人にも共通して買ってもらえるようなかばんや商品を作っていくことが重要だと思っています。

 

ーーー海外進出のためのグローバル化ではなく、グローバル化した先にある世界を見据えた海外進出、ということですか!

 

そうそう!

海外展開を進めることで、多様性に触れることができる。

海外進出は、そのエッセンスを自分たちの肌で感じるための手段だと思っています。

 

ーーー「豊岡の技術を世界へ」と考えると、地域貢献とグローバル化って実はつながっていて、切り離せないことなんですね。

 

地域貢献とグローバル化を同時進行する上での課題

ーーーとはいえ、地域貢献とグローバル化を同時に進めるのってなかなか難しいのでは?

 

たしかに切り離せないんだけど、特に難しいと感じるのは採用面や社内の認識のすり合わせ

今、国内では豊岡本社の他に東京にもオフィスがあるんですが、同じ会社だから事業所が違えど同じ方向を目指すはずなのに、地域が違うと伝わることに差が生まれる。そこに対する違和感は正直ありますね。

 

ーーー地域によって同じ話が理解されにくい、ということですか?

 

そう。例えば、「地場産業」というキーワードは豊岡だとめちゃくちゃ響くわけですよ。豊岡って日本で唯一かばんの神様がいる街で、8月1日にその神様が祀られている神社から御神輿を出してお祭りをするんです。兵庫県の北部ではかなり大きいお祭りなので、彼らはそういう部分を味わっているから地場産業への馴染みが深くて。

逆に、東京では通じやすい「グローバル」という考え方が豊岡だと「?」となることが多いんです。その地域セグメンテーションがすごくミスマッチを感じさせる

でも東京の就活生で豊岡の地場産業というものに興味をもつ人がどれだけいるんだろうね。

 

ーーーたしかに。海外どころか、社内で生じうるギャップも解消する必要がありますよね。具体的に何か工夫されていることはありますか?

 

新卒採用の際に1人だけ雇うことはしないようにしています。

「同期」って大事だと思っていて、同期入社のメンバーの関係性を見ます。バランスがとれているかどうか。例えば、どうしてもこの人欲しい!となった時に、そこを中心として他の人を見る。チームには必ず核となるものがあるので、核となる人を見つけたら、それに応じてその後採用する人を変えたりします。

 

ーーー新しいですね!

事業全体の編成も都度考えながら採用していらっしゃるんですか?

 

最終的には見ます。でもそこにこだわると、東京オフィスはこう、本社はこうっていうセグメントが余計に出来上がっちゃうでしょ。それは避けたいので、あえて同期同士のバランスに注力してます。

 

ーーーチームのバランスがいいっていうのは、ただウマが合うっていうわけではないってことですよね。

 

もちろん、全然違いますね。むしろ居心地は考えていない。基本的に、同期を見ると、「まったくわたしとタイプが違う!」という人が横にいると思いますよ。(笑)

でも、結局なんだかんだで同期って相談も乗ってくれるし、入ってきたときの環境が一緒だと心境も近いものがあるし。

 

ーーー個々を見る際にも着目している部分はありますか?

 

逆に、個々で重視しているのは笑顔ですかね、、、うん、やっぱり笑顔が大事ですね。

顔を見てると性格ってだいたいわかるからね。

特に部長・社長の前って緊張すると思うんですけど、緊張した時でも笑える人じゃないとうまくいかないと思うので。営業活動でも、社内で何かをお願いする時にも。

 

ーーーあえてグローバル化と紐づけると、「笑顔は国境を超える」ともよく言いますよね!

 

お、かっこいいこと言うね!

でも、ほんとにグローバライゼーションのツールにもなりうると思うんです。

ちなみに、だいたい顔を見るとその人のコンディションがわかるんですよね。今こういうことで悩んでるんだろうな〜とか、この人1回自分でちゃんと考えてから相談しようと思ってるんだろうなとか、だいたいわかりますね。

だから僕も社内では意図的にみんなに話しかけに行くようにはしてます。しつこいと思われてるかもしれないけど。(笑)

 

成長の鍵は「プラス発想」をどう活かすか

ーーー 一緒に働きたい人の基準として掲げていらっしゃる、「プラス発想」って何ですか?

 

そうですね。プラス発想って、スポンジのように知識をよく吸収し、膨らまし、活用することを表しているんですけど、それってつまり偏見とか固定概念にしばられないことだと思うんです。本来面接で言いにくい経験が逆にその人の血肉になっていることもあるから、素直に言えばいいと思う。例えば、「スナックで働いてました」とかって言わないでおこうとする人多いですよね。でも、授業にちゃんと出て、空いた時間に高時給のバイトをして、閉店後はしっかり寝て、またしっかり授業を受けるという生活を自分で作るのってものすごく効率的じゃないですか。

 

ーーー確かに!むしろアピールポイントですね!

 

そう。自分の引き出しをただ増やすとスペース取るだけだけど、どこのスペースを効率的に開けようかっていう活用の仕方はプラス発想につながると思います。そうやって効率的に考えると、自分のやることがどのように会社の役に立つかも自発的に考えられるようになってくる。

 

ーーー自走心にも繋がるって言うことですね!育成面でそういうことを教えたりもするんですか?

 

テクニック的なところは教えますね。例えば、お客様には早く連絡しなさいとか。ウノフクの社是で、「誠実」というのが社員によく浸透していて。納期・品質・回答をスピーディーに行うというのが核となる部分。あまり根本的な部分を「こうしなさい」とは言わないけど、お客様のことを考えてどうしたらよいかというテクニカルなところは教えています。

 

ーーー指示というよりは、もともと持っている誠実な部分をさらに伸ばすためのテクニックを教えているんですね。

 

そう。彼ら(社員)は畑とか花壇なんです。あとはもう、どんな種をまいてあげるか。「プラス発想」という基準を満たして入社してきているので、土壌豊かな土地は持ってるんです。そこに種をまくのは経営者の役目。咲きが悪かったらもうその種はまかなきゃいいだけで、別の種をまく。配置転換すればモチベーションがガラッと変わったりしますもんね。

 

ーーー本当に、素材を受け入れて誠実に向き合う、と言うのが会社の至る所に染み付いていると感じます!

 

地域貢献×世界進出の先にウノフクが目指す姿とは?

ーーー最後に、「伝統継承×革新力で世界に躍り出る」というビジョンが達成できた時、ウノフクさんはどんな姿になっていると想像していますか?

 

これはおそらく50、60年後になるかなと思っているんですけど、その時には多分宇宙開発とかやってるんじゃないですかね?(笑)やっぱりお客様がいるところにウノフクはいくので、もし月面に住人が出てくるとしたら、そこに合う商品が必ず出てくると思いますし、そういった地球とは違う環境におけるかばんのあり方を追い求めているんじゃないかなと思いますね。

 

ーーーまたまたスケールが大きい...!

 

でも、必ずしも売り上げが一番ではないし、僕は大企業にしたいとは思ってなくて。逆に、中小だからこそ一人一人に目が行き届くっていうのがあるので。それを生かして、例えばとにかく気遣い溢れたかばんとか、世界で一番永久保証を長くするとか、「世界でも〇〇といったらウノフクだよね」というものを狙いたいですね。ニッチな部分でいいと思うんです。伝統技術だけじゃ正直通じないと思う。だからこそニッチなセグメンテーションを探し求めて、そこで勝負したいですね。そのポイントを海外進出しながら探っている。どこが自分たちのストロングポイントなのかって、井の中の蛙ではわからないですから。

 

取材後記

終始和やかに、でも鋭く未来を見据えたお話をしてくださった卯野さん。

まもなく100周年を迎える今、もうすでに次の100年、200年、300年先に向けた動きをしていらっしゃるのが衝撃でした。

そしてその動きこそが、これまでの豊岡の歴史への恩返しとなっているのですね。

地場産業、グローバル化、プラス発想、そして笑顔。これらのキーワードにピンと来た方、ぜひウノフクの 採用情報をチェックしてみてくださいね!

採用情報

https://career.unofuku.co.jp

 

 

 

 

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