施設の中に駄菓子屋!夢は村づくり?!(株)シムレスが目指す『心のバリアフリー化』とは【代表インタビュー】

レッド

written by 斉藤彩

埼玉県さいたま市に3つの放課後等デイサービスを構える株式会社シムレス様(以下敬称略)。設立6年目の今年、新たに18歳以上向けの生活介護事業所を開設されるんだとか。

「施設内に駄菓子屋スペースとガチャガチャを設置するんです」と笑顔で話すのは、代表の麻生拓郎さん。

麻生さんが障害者支援に携わり続ける理由とは。そして、駄菓子屋をきっかけにつくりたい世界とは。普段は語られることの少ない本音が詰まった赤裸々インタビュー!

株式会社シムレスのことや、障害福祉事業のやりがいについて知りたい方におすすめの記事です!

インタビュイー:麻生 拓郎さん(あそう たくろう)さん

インタビュイー:麻生 拓郎さん(あそう たくろう)さん

株式会社シムレスの代表取締役社長。
スタッフ曰く「生粋の人たらしで、事業所を明るしてくれる存在」。

*将来の夢:カレー屋さん、バリアフリーの村づくり
*好きな駄菓子:よっちゃんイカ、チョコバット

インタビュアー:清水 遼太

インタビュアー:清水 遼太

「働くかっこいい大人を増やす」をビジョンに掲げるインビジョンの営業担当。
麻生さんとオンライン会議を重ね続け、この度ついに初対面を遂げる。

*好きな駄菓子:わさびのり太郎

 

『障害福祉事業』との出会いが人生の転機

▲左:社長 右:現大宮事業所の管理者

 

ーーー早速ですが、シムレスさんを設立するまでのご経歴を伺えますか?

高校卒業後に福祉系の専門学校に入学して、専門学校卒業後は介護福祉士として特別養護老人ホームやデイサービスで勤務をしてました。元々おじいちゃんおばあちゃんと住んでいたこともあって、何かあったときに助けられたらという気持ちもあって。

28歳頃までは責任者をやりながらも現場の人間として働いていたんですが、29歳で転職した営利法人で障害福祉事業の立ち上げを任されたんです。

元々独立するっていうのは自分の中で決めてたんですが、立ち上げに関わる中で介護事業以上のやりがいを感じたので、障害福祉事業で会社をつくることにしました。

 

ーーー障害福祉事業のどんなところが麻生さんの胸を打ったのでしょうか?

介護ってなかなかご家族が見に来ることって少ないんですよね。施設選びも雰囲気で決める、みたいなことが多くて。でも障害福祉は、保護者さんが何か所も施設を見学して、ここだっていうところを選ぶんです。そのエネルギーの大きさっていうのかな。このお父さんお母さんの力になりたいっていうのを強く感じましたね。

僕は聖人君主じゃないけど、この仕事をしながらたまたま障害を持って生まれてきた子たちを見ていると、なんかできることあるよなって本当に思うんですよ。

日本中、埼玉中のお子さん、保護者さんを助けたいなんて大それたことは思えないけど、今までの経験とか資格を活かして、手の届く範囲の人たちのために何かができるんじゃないかって。

あとね、障害福祉の方が、介護よりも10年くらい遅れてるんです。『放課後等デイサービス』という名称の施設ができたのも2012年。まだ10年くらいしか歴史がないんですよ。介護が辿ってきたものを遅れて辿ってるから、「まだそこにいるの?」っていう、未開拓ならではのやりがいもあるのかもしれませんね。

 

ーーー独立したいと思ったきっかけは?

もともと誰かの下にいるのが苦手で。「ああしろこうしろ」って指図されるのが嫌だったんですよ。学生の頃は先輩にも「たった1年早く生まれただけで偉そうにすんな!」って思ってましたね(笑)

でも代表になるにあたって、部下になる人の気持ちも分かっておかないとダメだろうと思って、卒業後はまず就職をすることにしました。
 

口座残高125円!? 開所1年目の危機とそれから

▲事務所に飾ってある平常心の文字。大分の実家から持ってきたそう。

 

ーーー今年で6年目、大変だった時期もありましたか?

事業開始1年目が一番しんどかったですね。2018年の4月1日に南与野店をオープンしたんですが、9月くらいに法人口座の残高が125円になったことがありました。

新参者なのでなかなか信頼もなく、想定より利用者さんが増えなくて…。どうにかお金を借りて突き進んだら翌月からやっと黒字になって、翌年の4月に2店舗目を開設できました。

 

ーーー最近は軌道に乗ってきましたか?

ありがたいことに新しく4つ目を開設できるくらいにはなりましたが、今働いてくれている子たちが一気に全員辞めます!なんてことになったら一瞬で潰れますからね。たまに夢に見ますよ。

インビジョンさんと出会った2年前は4人しかいなかったけど、今6期目で32、3人体制まで増えてきて。今期で50人くらいになることを考えると、創業期みたいに勢いだけでは上手くいかないですからね。

利用者さんだけじゃなくて、今働いてくれてる人も、これから仲間になる人も、シムレスに関わる人はみんな幸せにできるような会社にしていかないとですね。

 

ーーー新規事業所もやはり「シムレスに関わる全ての人を幸せに」という理念の実現に向けて開設されるんでしょうか?

保護者の方に「卒業してもプティさんと関わりたい」っていう風に出口を求められることが多くなったんです。あ、うち社名はシムレスなんですが、事業所は『プティ倶楽部』っていう名称なんですよ。あんまりシムレスの方は浸透してないみたい(笑)

そんな風に言ってくださる方が一人でもいて、私たちが大人向けの事業を始めることで未来が少しでも安心になるなら、やらない手はないなと思って。
さいたま市だけで何か所もやってる、っていうのも珍しいので、今7、80人くらいの利用者さんが登録してくれてます。「プティさんと関わってたらなんかおもしろそう」って思ってくれる人が多いのかな。そうだったらいいなと思います。

 

ーーー新規事業所で何やら楽しそうなことをされようとしてますよね?

そうなんですよ。駄菓子屋スペースを作って、ガチャガチャも置きます!
 

ーーー駄菓子屋にガチャガチャ… その2つをチョイスしたのはなぜですか?

僕がファンタジスタって呼んでる後輩がいるんですが、彼が介護事業で『じいじばあばの便り』っていうガチャガチャをつくってて。おじいちゃんおばあちゃんが若者のために書いた手紙が出てくるんですが、え、それいいじゃんって思って。

 

▲これがうわさの『じいじばあばの便り』。一人暮らしの若者は特に心に沁みそうですね。

 

でも手紙だと被っちゃうから、利用者さんが生産活動として作成したものをガチャガチャに入れるのもいいかなって。それを全国のガチャガチャ屋さんに売って、その売上や駄菓子屋の売上を利用者さんたちに還元したいなって考えてます。

▲新規事業所の間取り。駄菓子屋スペースも広めに確保!女性社員からの要望でトイレは3つに。

 

障害者を社会に参入させる取り組みはいろいろあるけど、健常者の世界の中に障害者が入るのってものすごくハードルが高いんですよ。でも健常者の方からこちらの世界に来てもらえれば、自然に交じり合えるのかなって。

昔ながらの駄菓子屋さん。名前は『プティ堂(仮)』です(笑) 一般の方も来れるので、ぜひ買いに来てください!
 

ワクワクの先に、作りたい世界


 

ーーー駄菓子屋、ガチャガチャと、麻生さんが脳内で思い浮かべていることが実現されている印象ですが、この先まだやりたいことはありますか?

カレーが大っっ好きなんですよ。だから子ども食堂とリンクさせたらないいな、なんて思ってます。カレーを食べながら漫画を読んで待ってられるようにできたらな、とかね。「お米の調子が悪いので今日はお休みします」って言いたいんです(笑)

 

ーーー麻生さんのワクワクすることが全部シムレスさんの事業とリンクしているのがいいですね。

そうですね。畑借りてさつまいもを育てて焼き芋屋さんもやりたいなって思ってました。

「障害のある子たちができる仕事ってなんだろう」って考えたときに、もくもくとシールを貼るとか、ビーズを入れ続けるとかっていうのがよくある仕事だったので、実際にやってみたんですよ。でも上手くできなくて発狂しましたもんね(笑)

それをもくもく丁寧にできるのも彼らの才能ではあると思うけど、人が来て、商品を渡して、ありがとうって言われて、っていうこの当たり前のコミュニケーションが取れた方が、彼らも楽しいんじゃないかって思うんです。

 

ーーー麻生さんの目指す『バリアフリー化社会』って、そういうことから始まるのかもしれませんね。

僕たちにはたまたま5本の指があるけど、これって本当にたまたまじゃないですか。だけど幼い頃、障害のある子を輪に入れられてたかな?って思うと、悪気なく少し壁を作ってたんじゃないかなって思うんです。

そういうのを全部取っ払ったのがバリアフリー化社会だと思うんですが、やっぱり健常者の世界に障害者が入るのは難易度が高いから、村を作りたいなって。

 

ーーー村??また唐突ですね。

この仕事をしていると「一人で外出ないで」とか「あっち行っちゃダメ!」っていう場面がよくあるんです。でも村ができれば「どこ出歩いてもいいよ」って言えるじゃないですか。

忍者に憧れて小田原城みたいなお城に住みたかったという個人的な理由もありますが(笑)

 

ーーーシムレスさんがただの障害福祉事業じゃないってことを理解して、麻生さんのワクワクを一緒に夢見れるような人が来てくれたらいいですね!今日はありがとうございました!
 

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