町の新たな風物詩“ガンプラひな壇”を生んだ地域おこし協力隊!気になるその後は?

レッド

written by 川西里奈

地域での暮らしを伝える連載第3回目は、栃木県の那珂川町で、地域おこし協力隊として活動されていた斎藤悠子さんにお話を伺いました。

地域での活動はどんなものだったのか、任期を満了した現在はどんな道に進んだのか。たっぷり伺いました!

斎藤悠子さん

栃木県鹿沼市出身。那珂川町の地域おこし協力隊として2020年3月まで活動。

空き家を利用した、コミュニティスペースが誕生

__こんにちは!おや、なんだかここはとっても趣のある場所ですね。どういう場所なんですか?

 

斎藤さん(以下、斎藤):ここは、「明治屋」というコミュニティスペースで、イベントを開催したり、地域の人や地域おこし協力隊が集まる場所となっています。

 

元々は、空き家となっていた洋服屋の建物を、前任の地域おこし協力隊の人が何か楽しいことをできる場所にしよう!と利用したのが始まりです。

 


▲明治屋には、かつて実際に使われていたというアンティークな品々がさり気なく置かれている。

 

__ここではどういったイベントが行われているんですか?

 

斎藤:商工会のお祭りがあるときにはマルシェを開催したり、ボードゲームの大会をやったり、あとはひな祭りの時期にはガンプラのひな壇を展示したりしましたね。

 

__ガンダムのひな壇!?

 

斎藤:そうなんです。ここに飾ってあったんですよ(笑)。

 


▲2020年のガンプラのひな壇の様子。

 

__おもしろい!ぜひ来年見てみたいです!そもそも、斎藤さんは鹿沼市の出身と聞きましたが、なぜ那珂川町の地域おこし協力隊になることになったのでしょう?

 

斎藤:少しさかのぼってお話すると、地元の栃木県鹿沼市の商店街でお化け屋敷をやることになったのが地域に関わり始めた一番初めのきっかけです。

 

__お化け屋敷ですか?

 

斎藤:商店街を活性化するために、地元の知り合いが企画して、いっしょにやろうと声をかけてくれたんです。

当時はまったく別の仕事をしていましたが、震災を機に、やりたいことはすぐやらないと!と感じていたこともあって、参加することに決めました。

空き家となった呉服屋さんを活用して作ったそのお化け屋敷は、その後も毎年夏に開催し、多くの方に来ていただいてとても好評でしたね。

その後も商店街でのイベントの事務局スタッフとして、地域の活性化と人材育成を目的とした活動や、町の市民団体のサポートやボランティア講座の企画などをしていました。

そんな感じで、気がつけばずっと地域に関わりのある仕事をしてきました。
「このまま鹿沼市で暮らすんだろうな」と思っていた矢先、那珂川町出身の夫に出会いました。

バイオ熱を利用したコーヒー農園に就職

__お!やっと那珂川町とつながってきましたね!

 

斎藤:はい(笑)。それで夫から、那珂川町でもお化け屋敷をやることになったらしいよ!と聞いて、那珂川町について調べてみると、地域おこし協力隊を募集していることがわかりました。

そのときちょうど、商店街の活性化がミッションだったので応募してみると採用していただけて、今にいたりますね。

 

__なるほど!これまでの経験が那珂川町で活かされることになったんですね。

 

斎藤:その後、2年連続で那珂川町でお化け屋敷を企画し、たくさんの方に楽しんでいただきましたね。

 


▲那珂川町でもお化け屋敷を開催

 

地域おこし協力隊としては、町のお祭りを主催したり、マルシェを企画したり、町の人たちが交流できるイベントの実施などをしてきました。

 

__今年の3月で、地域おこし協力隊の任期は満了したそうですがその後は何をされているんですか?

 

斎藤:任期が終わるので仕事を探していたところ、コーヒーの栽培の求人を発見し、アルバイトなどで関わるようになりました。任期後はそのまま、コーヒーの栽培に携わっています。

 

__もしかして、“バイオ熱を利用したコーヒーの栽培”ですか?ハウスを見させていただきました!

 

斎藤:そうです!木材を燃やす熱を使用して、コーヒーやマンゴーの栽培をしています。

 

__バイオマス発電から、町に新たな雇用も生まれているんですね。今後も明治屋で、何か活動をしていくのですか?

 

斎藤:協力隊の任期は終了したのですが、この明治屋は個人で契約をしました。引き続き、この場所を今後もコミュニティスペースとして活用していきたいと思っています。

人とのつながりが、町で楽しく暮らす土台に

__地域についての活動をする中でどんな気づきがありましたか?

 

斎藤:自分が地域についての活動を続ける中で、町の人と助け合えることはとても大切なことだと思うようになりました。

場所はどこであっても、自分がそこで楽しく暮らすには、人とのつながりが大事ですね。

 

__那珂川町は、程よい人と人との距離の近さが、とても魅力だなと感じます。

 

斎藤:那珂川町って、小学生や高校生まで、知らない人にでも目が合ったら挨拶をするんです。それには初め、私もびっくりしましたね。

でもそうやって、顔を見たら挨拶と、ちょっと言葉を交わす。それで顔を覚えてもらって、安心してもらうのってとても大事なことかもなって思います。

ここに来てくれる常連さんや役所の人はみんな、ここが空いてると、「何やってるの〜?」と声をかけてくれますよ(笑)。

▲「町で楽しく暮らすには、人とのつながりが一番大事ですね」と斎藤さん。

 

__斎藤さんは、那珂川町のどんなところが好きですか?

 

斎藤:町にずっといる人たちの地元愛を、ふとしたときに感じるところですかね。

「何もないところに来たね〜!」て地元の人はみんな言うんですが、本当は那珂川町のことが好きなんですよね。

昔あったお店やお祭りの話を、すごく楽しそうにしてくれたり、町に誇りを持っているんだなと感じます。自分がそこに混ぜてもらえているのも嬉しいですね。

 


▲毎年恒例、明治屋でのお月見会の様子。

個人のスキルが地域のゆるいつながりを生む

__今後は町の活性化のためにどんなことをしていきたいですか?

 

斎藤:個人の持っているスキルを町に広げて、人の輪が作っていけたらと思います。

 

町の中では仕事でなくても、趣味の領域ですごい知識や特技を持っている人がたくさんいます。そういう人とつながっていけたら、もっとおもしろいことができるなと考えています。

ガンプラのひな壇も実は、たまたま家出した猫を探しに来たお兄さんが、話してみたらガンプラを作るのが大好きで、それがきっかけで始まった企画です(笑)。

 

__そうなんですか!どんどん町の人を巻き込んで何かを作っていくのはおもしろそうですね!

 

斎藤:地元の人も新しく来た人も、誰でも気軽に出入りができるゆるいつながりが生まれると良いですね。

なのでこの場所を、普段の仕事ではつながらない人とつながれる場所にしていきたいです。

 

▲地域のみんなで集まって“Nakapedia”も更新中。

 

__町に新しく、どんな人に来て欲しいなどありますか?

 

斎藤:こういう人に来て欲しい!というのはなくて、どんな人でも大歓迎です。
その人の趣味や特技が発揮されて、町の人が楽しんでくれたら、私自身も楽しいですね。

なので、町で何かやりたいなら、どんな人でもウェルカムです!

ありがとうございました!

取材を終えて

地域おこし協力隊の任期を終えても、那珂川町の活性化のために活動を続ける斎藤さん。

お話を伺っていると、斎藤さんご自身が、町での暮らしを本当に楽しんでいるんだなと感じます。その土台となるのは、町の人とのゆる〜いつながり。

取材中も、「今日は何をやってるの〜?」と声をかけてくれるおじいちゃんやおばあちゃんに、にっこりと対応する斎藤さんがとても印象的でした。

 

斎藤さんが運営するコミュニティスペース『明治屋』では、建物の再生・改修のためのクラウドファンディング、“町の正倉院プロジェクト”を実施中!
▼“町の正倉院プロジェクト”についてはこちらから!

この記事をシェアしよう!

  • hatena