ライフデザイン・カバヤの役員が語る青写真。創業50年の住宅メーカーが目指すサステナブルな循環型サイクル事業とは
written by ダシマス編集部
私たちが人間らしく豊かに暮らすために欠かせない“衣食住”。そんな住の領域をデザインするために住宅メーカーをはじめとした建築業界に従事する人々がいます。彼ら彼女らが日々研鑽を積み創意工夫を重ねた結果、私たちの住まいは雨風をしのぐだけの箱ではなく、より快適に、そしてより安心に暮らせるようになりました。
そんな日本の住宅に欠かせない素材といえば“木”です。そんな一般住宅に広く使われる木を愛し、その魅力を世界に広めようとしている企業がライフデザイン・カバヤ株式会社(以下:ライフデザイン・カバヤ)です。1972年に創業して以来50年、地元岡山をはじめとした周辺地域の暮らしを守り続けてきました。
今回、同社で執行役員を務める笹野 陽介(ささの ようすけ)さんにインタビューを実施。ライフデザイン・カバヤが掲げる壮大な新中長期経営計画の全貌や、地元で圧倒的な信頼と実績を積み上げたその理由、そしてベトナムでの海外事業に注力する狙いなど、ライフデザイン・カバヤの過去、現在、そして未来の青写真まで存分に語っていただきました。
インタビュイー:笹野 陽介(ささの ようすけ)さん
岡山県岡山市出身。ゼネコン会社にて現場監督を経験の後、ライフデザイン・カバヤに2001年7月入社。設計、営業を経て2018年7月執行役員兼広島支店長に就任。広島エリアのトップとして「尊敬」され「頼られる」存在を目指し、日々一心精進している。
取材・執筆:大久保 崇
『ダシマス』ディレクター。2020年10月フリーランスのライターとして独立。2023年1月に法人化し合同会社たかしおを設立。“社会を変えうる事業を加速させ、世の中に貢献する”をミッションとし、採用広報やサービス導入事例など、企業の記事コンテンツの制作を支援する。猫ファーストな人生。歩くこと、食べることが好き。
木造の仕事がしたい。そしてお施主さま一人ひとりの喜ぶ顔が見たいと思った
――笹野さんがカバヤに入社したきっかけは何だったのでしょうか。
きっかけは当社OBの紹介による転職です。
前職はゼネコンに勤めており現場監督をしていました。鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物を相手にし、商業施設や公共工事などを手がけていたんです。充実した働き方ができていたものの、いつか木造建築の仕事がしたいという想いをずっと持っていました。
そもそも私がこの業界に入ろうと決めたのは小学生の時なんです。自分の家を建てる大工さんを見て憧れを抱き、私も大工さんになりたいと思いました。それがきっかけとなって建築の道を志し、建築の学校に行き、そしてまずは現場を知りたいと思ってゼネコンに入社し現場監督になったんです。
こうした想いとあわせて転職を考えさせた理由がもう一つあり、それは出資をされるオーナーさんの喜ぶ顔が見えなかったことです。例えば公共工事が完成しても、わざわざ市長が直接私たちに「ありがとう」と言いにこられることはありません。出資をしているといっても個人の所有物ではないし、建てた後にどう維持管理をしていくかの方が大事で、建てることは一通過点に過ぎないのですから当然です。
もしそれが一人のお客様で自分の家を建てるとなれば、それは一生で一番の大きな買い物になるわけです。そうすると思い入れも変わりますよね。こうしたお施主さまとのやり取り、一つひとつの仕事に感動を味わいたいという気持ちがありました。
こうした考えを、前職の時にお世話になっていた方に話したのですが、その方がライフデザイン・カバヤのOBだったんですね。それで「転職したいなら紹介してやるよ」とご縁をいただき、今に至ります。
――ぜひ笹野さんに木造の良さについてお伺いしたいです。
「木」というのは、経年変化で強度が増していくんですよ。乾燥、収縮していくと木は固くなる。弱点の湿気さえ除けば永久に強度は増していくんです。例えば五重塔や法隆寺など何百年も前の建物は、今でも強度が残っていて現存していますよね。
鉄筋やコンクリートにもそれぞれの強みは当然ありますが、経年変化はしないように見えますが、腐食して強度が落ちます。鉄骨の場合はサビ問題も考えられますね。
あと物質が持っている強度という観点だけでなく、費用対効果という考え方も大事です。なぜなら私たちが暮らす岡山県は、日本国内でも特に地盤が悪い地域だからです。
家の下には家を支えるための補強が必要なのですが、重い建物だとその分、補強にかかるコストも上がります。だから木造に比べると鉄筋コンクリートの建物は費用が高くなってしまうんですよね。地盤の悪い岡山だと一層コストがかかります。
エンドユーザーにしても木造であれば、現実的に手の届く範囲でお届けできるというのは魅力です。
――ライフデザイン・カバヤに転職してからも現場監督を続けていたのでしょうか。
いえ、現場監督にはならず設計と営業をやりました。現場監督がしたいと言って入社したものの、設計に人が足りていないということもあって設計を任されたんです(笑)。
それから7年ほどして、弊社社長の窪田からの提案で「営業も経験してみろ」と言われました。これもいただいたチャンスだと思って引き受け、それから10年ほど営業を頑張りましたね。そして今は広島支店の支店長を任され、広島エリア全体の責任者をしています。
当時は何度も異動する人間は珍しかったんです。そんな中、窪田も同じように設計から営業を経験し今の立場にいるので、私にとっては道しるべのような存在ですね。
――様々な役割を経験されてきたのですね。笹野さんが仕事をする上で大事にしている考え方を教えてください。
先入観だけでものごとを判断しないことです。
人生一度きりですから、やってみないとわかりません。食事と一緒で、食わず嫌いをせずに食べてみることでいろんな発見や気づきが得られます。その考え方を大事にして仕事を続けてきたからこそ今の私があります。
植樹から建築まで。“木の循環サイクル”を作りサステナブルな事業を展開
――ライフデザイン・カバヤの事業内容についてお聞かせください。
私たちは2020年から「新中長期経営計画」を掲げており、その3本柱として「既存事業」、「成長事業」、「新規事業」があります。
既存事業は住宅部門で、主に新築・注文住宅を取り扱っています。会社全体75%くらいの売上を作る弊社の大事な事業です。
この安定した住宅部門に付随する事業が、成長事業として位置づけている部門になります。既存事業の新築が伸びていくことで成長するだろうと考えている領域ですね。例えばエクステリア事業やリフォーム事業、それに不動産事業です。
そして今後の弊社の成長をになっていくであろう新規事業。それが特建事業(特殊建築物事業)、フランチャイズ(以下:FC)事業、海外事業です。
――かなり手広く展開されていますね。各事業については後ほど詳しくお伺いしますが、先にこうした事業の根幹にある会社の考えをお聞かせください。
まず私たちの事業の根幹には、全て“木”に対する強い思い入れがあります。日本は木の文化が根付いている国です。そんな木が一個人の生活の中で特に重要な役割を担うのが住宅です。
生活に欠かせない衣食住の中の“住”を担う役目を果たす。それが私たちの原点です。また創業以来、日本の気候風土にマッチしている住宅を供給することにもこだわっています。こうした原点を50年間磨き続けてきた結果、今の弊社があります。
――住宅業界はウッドショックによる影響も大きかったかと思います。今後、木造住宅の未来はどうなっていくのでしょうか。
まずウッドショックの影響があれほど大きくなった要因の一つは「国産材を活用できていなかったこと」でしょう。そもそも日本は全国的に見て木造建築のシェアが圧倒的に高い。
私たちは岡山の地場産業の方々と連携し、国産材を率先して使えるようにするための取り組みをしています。例えば西粟倉村と提携し植樹をするといった活動です。
苗木を弊社の新入社員が植えるのですが、もし自分が植えた木を自分の家に使いたいとなれば、他のどんな家よりも思い入れが強くなりますよね。木を中心に、そんな温かみのある循環を作りたいと考えています。
こうした地道な取り組みを重ね、地域で「木の循環型サイクル」を作ることに注力しています。
既存事業の強みは「地域随一の実績」と「信頼される営業の存在」
――既存事業の強みは何でしょうか。
既存事業である住宅部門の強みはやはり実績です。おかげさまで私たちは「岡山県戸建注文住宅着工棟数」が8年連続1位*をいただいています。私が入社した22年前はまだ、着工棟数で県7位くらいだったのですが、そこから成長して今では継続して1位が獲得できるようになりました。(*住宅産業研究所調べ)
こうした実績が作れた背景には、日本カバヤ・オハヨーホールディングスの母体でもあるオハヨー乳業とカバヤ食品のブランディングができていることが大きいですね。県内では圧倒的な信頼につながります。
こうした大きな信頼を裏切らないためにも、お客様に対するアフターフォロー、メンテナンス対応に責任を持って対応してきました。そこに実績が伴ったことで、弊社は地元に密着した地域企業としてご支持いただいたのだと思います。
あともう一つの強みが「営業が長く居続けていること」です。お客様が何をもって選ばれるかというと、様々な理由はありますがもっとも影響があるのは営業の人間力だと思っています。
私たちはみな、アフターフォローまで含めた弊社の建物には絶対的な自信を持っています。ただどれだけ商材が良くても、最後は提案する人間次第なんですよね。
そして満足してくださったお客様は、ご友人を紹介してくださいます。こうしたお客様からの紹介による受注率は年間で約55%あるんですよ。これはこの業界ではかなり高い割合です。
こうした信頼に応える人材が育成されているからこそ、成り立っているのが既存事業ですね。
――受注の半分以上が紹介から生まれているのはすごいですね。優秀な営業メンバーが育つ仕組みを会社が作っているのでしょうか。
販売マニュアルを作成し、研修や講習会は熱心に行っています。あと時代の変化とともに、世代に合わせた教え方をするように気をつけていますね。例えば、本人が自信を持って営業ができるようになるまでの3~5年くらいは店長かエリア長、もしくは私が現場に同行しています。
言葉で説明するだけでなく、実際に自分達が目の前でやってみせる。そして本人にもやってもらい、出来たことはしっかりと褒めるなど、現場に同行しているからこそ本人の心に届くアドバイスができます。今の時代は、こうした丁寧な教え方が必要です。
毎回、同行するのは正直に言えば時間もコストもかかります。ですが実地での指導にこだわり育てているからこそ、優秀な営業が育つと考えています。
勝ちを確信した成長事業と“人材の循環サイクル”を作るための新規事業
――続いて成長事業についてもお聞かせください。
成長事業は既存事業に付随する事業です。
エクステリア事業であれば、外構担当者を各支店に配置し、早い段階から設計とリンクして外構も含めた設計が提案できるようにします。こうした関わり方ができれば、外構も含めた出来上がりのイメージも共有できるだけでなく、外構にまで弊社の保証が有効になります。ここは特に既存事業を軸に伸ばせる領域の一つだと見ています。
また私たちは創業50年で約1万8千件のお客様がいらっしゃいます。50年近くお付き合いしていると、リフォームやリノベーションなどの相談が増えます。SDGsといったサステナブルな考え方が浸透する時代背景も相まって、ニーズが非常に高まっています。リフォームやリノベーションは、私たちが目指す循環型サイクルにも深く関わっており外せない領域ですね。
不動産事業も伸びしろが大きいです。弊社は岡山県下で一番の土地仕入れをしているので、豊富な土地を武器に宅地造成し分譲住宅にも力を入れています。
家に求められる内容は多様化しており、例えばマンションを検討している人の真意が「注文住宅の手間が嫌だから」と考えているケースも少なくありません。ゼロから間取りを考えるのが面倒で、気に入ったものがあればすぐに欲しいという人が増えてきているので、ここも今後の成長が期待できる領域です。
――確かにどの領域も成長が見込めるところばかりですね。最後に新規事業についてもお願いします。
まず特建事業ですが、物流倉庫や企業の社宅やマンションの他にも、公共事業として美咲町の町役場や岡山市役所の建替え工事も大手ゼネコンと組んで受注させていただきました。こうした実績が出始めており、今後も注力していく予定です。
FC事業というのはCLTフランチャイズ事業のことです。CLTとはCross Laminated Timberの略称で、ひき板(ラミナ)を直交に並べた集成板を意味します。海外であれば地上10階建ての木造建築、日本でも最近は大手メーカーが東京で建築されるなど、CLT建築の事例は増えています。
私たちはCLT専用のオリジナル金物や日本初のCLT専用構造計算ソフトを用いてオリジナルCLTパネル工法を開発することによって全国に加盟店を増やし、FC事業を広げようと計画しています。
――あと一つが海外事業ですね。
海外事業は国境を越えた技術の普及のため、社長の窪田がベトナムに職人を育成する大工訓練校「ライフデザイン・カバヤ・ベトナム」を作ったことが始まりです。その目的は、将来の日本における大工人口の減少に歯止めをかけることにあります。
今、日本国内では職人さんが不足しています。特に若い働き手が減っていて、第一線で活躍する職人さんはもう50歳になるんですよね。そこでベトナムで意欲のある方々に技術を教え、日本にきて働いていただけるよう学校を作りました。
日本で働いてさらに技術を磨けば、母国に帰った時にも役立ちます。例えば弊社が現地で木造の家を建てようとなった際に、仕事を斡旋することができるからです。こうした「人の循環サイクル」を作るのが、ベトナム進出が持つ大きな意味でもあります。
――なぜベトナムだったのでしょうか。
当時、フィリピンに出店している業者は割といたらしいのですが、ベトナムはまだ少なかったからというのはあったと思います。それにベトナムは社会主義国家ということもあって治安が良い。加えて、人口増加をしている国だけあって若年層が多く優秀な人材が集まりやすいんです。あとは親日国という点も候補選定の理由となりました。
――職人不足の問題を解決するために海外に学校を作っているなんて、全国的にみても貴社くらいではないでしょうか。
そうですね。実際に人材が循環している企業さんは少ないと思います。
――木の循環や人の循環など、こうした循環型サイクルの考え方を会社として非常に大事にされているように感じます。今後は学校だけでなく、現地での住宅販売などにも力を入れるつもりでしょうか。
そうですね。私たちは本当に木にこだわっているので、ベトナムに木造建築の商品を届けたいと思っています。ベトナムの建物は基本コンクリートブロック造が多いので木造の建物がほとんどないんですよね。直近だと、まずCLTを使った建築を持ち込みたくて、ハノイ交通大学とジョイントしながら3階建の実験棟を昨年大学の敷地内に建てました。
――ベトナムの大学と連携しているなんてすごいですね……!
まだ始まったばかりのプロジェクトなので、何も形はできていないのですが、耐応年数を確認するためにわざと木を腐らせてみるなど様々な実験をしています。
似たような取り組みは国内でもしていて、沖縄にも支店を構えて沖縄で木造の建物を作っています。沖縄もベトナムと同じようにコンクリートやコンクリートブロックで作った建物が多く、基本、木造の建物が少ないんですよね。こうした木造建築が不向きと考えられている高温多湿な環境に耐えうる商品を作る。そのために沖縄でベースを作っているんです。
ベトナムをはじめとしたアジアというブルーオーシャンに進出する準備は着々と進んでいますね。
「率先垂範」まず自分が仕事を楽しむ。そして憧れられる存在であり続ける
――ライフデザイン・カバヤさんは“社員満足度世界一の「木造建設会社」になる”という理想を掲げているとのことですが、自社の社員さんが満足して働くためには一番何が大事だと考えていますか。
お給料や働く環境ももちろん重要なのですが、それ以上に大事なのは人間関係です。人が離職する一番の理由は人間関係にあります。ですので、どれだけ風通しが良く話しやすい環境が作れるかを重要視しています。
弊社の伝統として受け継がれているのが団結力です。「一人がみんなのために、みんなが一人のために」を大切にする文化があります。お互いが補完し合える環境を整えることが社員満足度の高い環境だと考えています。
――人間関係は個人の問題ではないですし、会社にそのような文化が根付いていると安心して働けそうです。
また仕事の楽しさとは成功体験から生まれるものです。
私もそうですが、お客様から「あなたのところで家を建てます」や「ライフデザイン・カバヤで家を建てて良かった!」といった言葉や、「営業があなたで良かった!」と言われる瞬間が一番嬉しいんですよね。そしてこうした成功体験を、利他の心を持ってお互いに共有し合っていくことで、チームでする仕事がより一層面白くなっていきます。
こうした考え方を持った上で、私個人としても努めて楽しく仕事しようと心がけています。やっぱり「笹野さんのようになりたい」と思ってもらいたいじゃないですか(笑)。
嫌な思いをして辞めてもらいたくはありません。だから私のような立場の人間が、憧れられる存在でいることは大事だと思っています。そのために日々研鑽しています。
――たくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に笹野さんから、今後を担う若い世代の人達へ一言お願いします。
就職活動はお見合いと一緒だと思います。
企業の理念など、対外的に知られている情報を調べることも必要ですが、何よりも実際の雰囲気を感じてもらうことが大事です。企業説明会や会社見学などで会社の中の人と実際に話し、ぜひ従業員の素の笑顔も見てみてください。
そしてここで働きたいという会社が見つかったら、ぜひ「自分がこの会社を引っ張ってやろう」という気概を持って入社していただきたいですね。
――若い人達にはぜひ色んなチャレンジをしていただきたいですよね。
私たちも入社してもらった人に、「定年までずっと勤めたい会社」と思ってもらえるように取り組んでいます。だからこそ、当たり前のことですが頑張っている人が頑張っていると評価される会社でありたい。
会社のルールも大事ですが、時代とともに世の中の論調や考え方は変わっていきます。今はそこにアジャストしないと企業は生き残れません。私たちも積み上げてきた伝統は大事にしつつ、変えなくてはいけないと感じるところは変えていきます。
その結果、この業界では珍しくかなり多角的な経営をしていると思います。私たちのような地域密着の企業がここまで手広くやっている会社は結構少ないんですよ。
もしこんな会社に少しでも興味を持っていただけたのなら、ぜひライフデザイン・カバヤの門を叩いてみてください。
ライフデザイン・カバヤについて
・ホームページ:https://lifedesign-kabaya.co.jp/
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