社員は極度の喜ばせたがり!?仕事を愉しむ大人の集団、KECの代表インタビュー
written by 斉藤彩
「10年・20年先にも続く自信を育てる教育を実践する」
そんな理念を掲げ、奈良県で塾を営んでいる株式会社ケーイーシー様(以下敬称略)。
「塾」ではなく「教育」に取り組みたいと話す代表の小椋 義則さんに、社員との関わり方やこの先目指す姿についてたっぷりとお話していただきました!
インタビュイー:小椋 義則(おぐら よしのり)さん
KECの二代目代表取締役社長。
奈良県生駒市出身、甲南大学卒。
中学ではレスリング、高校ではボクシングで高みを目指すも、惜しいところで花を咲かせられず。しかし大学生になると、新サークルの設立、新入生歓迎キャンプで300人もの交流の場を企画するなど組織のリーダーとしての片鱗を見せ始める。
大学卒業後は株式会社マイナビに就職。同社で複数の事業部を担当したのち、2007年9月株式会社ケーイーシーに人事として入社。2012年に代表に就任し、現在に至る。
インドで知る単位不足。引き換えに得た今に繋がる考え方
ーーー小椋さんがKECの代表になるまでのご経歴を教えてください。
大学卒業後は中小企業の採用コンサル会社に行く予定でした。そこで就職する気でインターンもしてたんですが、卒業旅行先のインドで「単位不足で卒業できない」って連絡をもらって。
留年して内定も取り消されるかもしれない、そんな状況だったけど「決められた人生を歩まざるを得ないインドの環境に比べたら、僕はなんて恵まれてるんやろ」って気付いたんです。
もちろん内定は取り消されて、住む予定だった西九条のマンションにも1日も入ることなく解約になりましたけどね(笑)
大学時代にしていたアルバイトの中にビラ配りの仕事があったんですが、やりたくない仕事で上から圧力かけられるのが本当に腑に落ちなくて。それから「どういう仕事に就くかで生きがいは全然変わる」ということに気が付きました。
父親の会社を継ぐのが決まっていたので、2007年9月にKECに入社して、「まずは優秀な人を採用する体制を作るのが先」と思い人事から始めました。
実は当時、社員の中でのもめ事が原因で業績も落ちて、銀行が毎日来るくらい危機的な状況だったんですよ。だから「変わらざるを得ない」ことが逆にパワーになりましたね。
やっと組織が馴染んできた2012年、先代社長が急逝してしまって、遺書もない中自分が代表になりました。社員からの批判、競合の台頭、そんなピンチを逆手に取って、なんとか業績を伸ばして今に至る、という経緯です。
ーーー危機的状況から業績を伸ばせた理由は何だったんですか?
基本的に他の塾がやってる教育と全く違うことをしました。「学歴=将来の安定」じゃないよって。
どうせ頑張るなら、楽しみながら一生懸命やりたいじゃない?だからその心を奮い立たせるような、ただ教えるだけじゃない教育サービスになってるのが大きいと思います。
『10年20年先にも続く自信を育てる』というコンセプトも、そこで打ち出しました。
僕は現場の経験がないので、社員を変えることによってKECを変えようとしたんです。アルバイトの講師が語る言葉一つで生徒自身が語る言葉も変わると思うので。
ーーー小椋さんの人生には逆境が多い印象ですが、あまり悲観されていないような感じが伝わります。
ヘロヘロですけどね(笑)
この会社に入ってからは「ネガティブな気持ちを一切持たない」が基本になったかな。ネガティブな気持ちは持っても仕方ない!前にも進まへんし、人が離れていくだけ。
弱音を吐くことや困ってることを打ち明けることは大事だけど、言葉に発するときはポジティブに。そうすると手を差し伸べてあげたいっていう人が増えくる。その積み重ねで今のKECになったと思いますね。
ーーー人を上手に巻き込む力やポジティブさが相まって、今の代表という立場がぴったりな感じがしますね!
そうなんですよ(笑) 今の仕事は僕にとって天職だと思ってます。
『誰かの人生の転機になる』やりがいであり、これが生きがい
ーーー代表というお仕事はかなり精神を使うと思いますが、笑顔で「天職ですよ」と言えるほどの魅力はどんなところにあるんでしょうか?
人が変わってる瞬間を想像すると凄く楽しいですね。キックオフミーティングをしてみんなが「もっと前を向こう」と感じてくれる瞬間とかね。
決算賞与も毎年手渡しにしてるんですが、10数時間かけて約200人分のメッセージカードを書いてるんです。一人ひとり全然違うメッセージを何行分も。
書いてる最中はしんどくて心も折れそうになるけど、渡す瞬間にまた次もやろうって思うんです。相手には喜んでもらえるし、僕は日頃の感謝が伝えられる。
向こうも僕も、お互いに「ほんまにありがとうございます」って言い合ってるんですよ。このWIN-WINの関係が、もう快楽ですよね。
ーーーそこまで一人ひとりと向き合うことを大事にするようになったきっかけはありますか?
僕生意気な学生だったんですけど、ある日先輩と大ゲンカしたことがあって。周りはみんな「小椋が悪い」って言うんだけど、担任の先生だけは「小椋は反抗はするけど、筋の通ってないことはしない」って守ってくれたんです。
高校のときも同じような経験をしたことがあって、そこで「信じてくれる人を裏切りたくない」って思ったのがきっかけかな。
僕は先生たちのおかげで人生が変わったから、今は僕と出会った社員や生徒たちにそう思ってほしい。
だって「あなたに出会って人生が変わりました」なんて最高の誉め言葉じゃない?
縁あって働いてくれてるわけだから、そう思ってもらえるように僕も頑張りたいんですよ。
導火線に火をつけるのは、僕だけじゃなく、みんなの役割
ーーー社員さん約200名にアルバイトの方も加えるとかなり大人数になるかと思いますが、どうやって全員の向く方向を統一しているんですか?
いろいろ方法はあると思うんですが、まず一つは「共通の目的・目標」を作ること。だから社内イベントもみんなが一つになるいい機会ですね。
あと僕、社内に対する発信の量がめちゃくちゃ多いんですよ。だけど闇雲に発信してるわけじゃなくて、この人は他に影響を及ぼしてくれそうだなって人に特に多めに発信して、拡散されているのもポイントですね。
他にも毎月「ベクトル共有勉強会」という時間を作って僕の講話をしています。50%くらいの視聴率なんだけど、ほんまに嬉しい感想文が多いんですよ。
「KECで働けることが幸せ」とか「社員さんがこんなに生き生きしてる会社で働けて嬉しい」とか「こんなに理念を追い求めてる教育機関は珍しい」とかね。
600人分の感想を全部読んでると「教室で困ってることがある」「この教室長が苦手」っていう情報も上がってくるから、そういうものに対してはすぐ動くようにしてますね。
ーーー今の規模で代表である小椋さんがそこまで細かいことを把握しているのってすごいですね!
見てくれてる感はあると思います。
コロナだから、どれだけ前向きな雰囲気や取り組みを伝播できるかって今まで以上に大事だと思うんですよ。
「僕らの仕事は感情を伝播する仕事やね」ってよく言ってるんです。一度火を付けたらチームの中で火が広がっていく、言わば同期発火。その形が今のKECっぽいかもしれませんね。
ーーーみんなで手持ち花火の火種を広げていく、そんな様子が思い浮かびました。
温度感にギャップはあれど、内なる熱意はみな同じ
ーーー「ド真剣に、全力でふざける」KEC様の社風を表す言葉の1つかと思いますが、小椋さんが「あれは全力でふざけたな~」と思うエピソードはありますか?
今年のキックオフミーティングはオンラインで8時間もやったんですよ。そのうち僕のパートは2時間あって。
普通8時間もミーティングなんてしんどいじゃないですか。でも例年うちの社員はこの時間を1年で1番楽しみにしてるんです。
何故かというと、2時間暇に感じさせないように小ネタを入れまくるから。今年は、振り返りとビジョンの間にターミネーターのパロディ動画『オグミネーター』を入れました。それはもう、めっちゃ本気の動画です。
僕だけじゃなく他のメンバーも仮装をしたり、バックに音楽や演出を入れた動画を作ったり。一瞬も暇をさせない、楽しませてやる、っていう気持ちがあるんですよね。
ーーー皆さん同じ温度感なんですか?
それが、意外とみんなじゃないですよ。見て楽しんでる人もいるし、昔ながらの職人さんみたいな人もいる。なんだかんだで「2:6:2」のような構図は生まれてるけど、どちらの「2」にもサボってる人は一人もいません。
ーーー社員の皆さんの雰囲気をもう少し伺いたいんですが、サボる人がいない社風はどのように出来上がっているんでしょうか?
トップダウンでボトムアップの会社をつくろうという理念を大切にしていて、成功事例発表会というものを開催しています。全90チームから選ばれた30チームが各教室でうまくいった取り組みを発表するんです。
例えば「教室長と担当教師以外も生徒の情報が分かるようにスプレッドシートに生徒の情報を書き込んでみました」とかね。教えてる先生だけじゃなくて他の先生にも気にかけてもらえたら嬉しいじゃないですか。
他にも、性格テストというものを大学の教授と開発してるんですけど、その結果を元に生徒のタイプ別にチームビルディングをしてみました、という取り組みもありましたね。
ライバルと競い合いたい子もいればマイペースに取り組みたい子もいるから、実験的に分けてみたら成績が上がりました、って。面白い取り組みですよね。
うちは会議で詰められることはないし、怒られることもまずない会社だと思います。そんなことより「いいところを盗み合おう」「相手に火が付く面白い仕掛けを考えよう」っていう想いがみんなにあるんだろうな。
ーーーこの先仲間になる人に求める条件はありますか?
KECってただただ前向きに見えるかもしれないんですが、実は決して明るい人ばっかりじゃありません。
『人を喜ばせる』ということを、ただ明るい集団としてやるのではなくて、限られた時間の中で最大化するために、計画的・意図的・科学的に研究して考えているんです。
だからそういった『仕事に対する緻密さ、誠実さ』は仲間の条件の一つですね。
ぶっちゃけ合わない人はほんまに合わないと思います。
おもしろい会議もあるし笑い声も聞こえる。だけどみんな率先してメモを取ってる。そんな会社です。
お互いが自由に意見を言い合える会社がゆえに、自分を律せない人や、相手によって顔を変える人とかは多面評価されるので、居づらい会社ではあると思います。
逆に「純粋に人を喜ばせたくて」という人にとっては、楽園だと思いますよ。空間そのものが楽しくてしゃあないんじゃないかな。
塾業界の秘めた可能性が明らかに!向かう先は世界進出!
ーーー仲間を集めて想いを伝播させ、この先小椋さんが目指したいのはどんなチームですか?
この仕事を天職やと思ってるって言ったけど、そう感じる人って多くはないけど他にもいると思うんですよね。だから同じような経験をさせてあげたいなって。
研修になんぼお金をかけてもいいから、僕の経験を伝えていって、それを学んだ人たちが更に自分なりの最善を重ねていって、KEC連邦本部ができたらいいなって。
すごい数の子会社があって、自分と各社長がお互いを高め合える、そんな組織を作りたいな。
ーーー最後に、小椋さんがKECで成し遂げたいことはありますか?
コロナ禍の今、塾業界って実はすごく恵まれてるんですよね。
衣食住って最も大事だと思われてたけど、今は服屋も飲食店も厳しいし、テナントも空いてたりするじゃないですか。交通機関が存続の危機になるなんて、誰も考えてなかったでしょう?
そんな中で塾業界はそこまで落ちてないんです。それだけ世の中から求められている業界だということも改めて知ったし、そんな中で生徒数を伸ばしているKECがもっと光ったら、周りも付いていきたいと思ってくれて、いい世の中になるんじゃないかなと。
教育って寺子屋の明治時代からほとんど変わってないけど、コロナでさすがに変わらなあかんってなってきているんです。だからICTを使うことによって教育を高い位置で均等化していければ、チャンスしかないなと。
日本だけじゃない、世界も狙ってますよ!日本だけ見ると大変だと言われてるけど、海外を見たらアジアが燃え盛っている今このタイミングで、日本中、世界中にKECイズムを広げていきたいですね。
ーーーたしかに、国内に留まっているのはもったいないですね!
日本の『相手を思いやる気持ち』で、前向きに世の中を変えていきたいなと思っています。
ーーー『エデュテイメント』を掲げる背景にはこんな想いがあったんですね。
「働くっていいな」と思えるような、素敵なお話をありがとうございました!