“業”として認められるような信頼される体制を。開渡の代表が語る、解体業の「社会的価値」と「働く価値」

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written by ダシマス編集部

長野県で解体業と産業廃棄物の収集処理の事業を展開する株式会社開渡。代表取締役の浦上幸成(うらかみ こうせい)さんは、創業以来、一貫して解体業界のイメージアップ、技術革新、そして優秀な人材の育成を行ってきました。

今回はそんな浦上さんに、解体業が社会にもたらす価値と、解体業で働くことによって得られる価値について語っていただきました。建物を壊して土地をきれいにする、廃棄物を適切に処理してリサイクルする。こうした大事な役割を担う解体業は、社会に必要不可欠な存在です。

そんな業界のリアルを、浦上社長が経験してきた実体験とともにお伝えします。

代表取締役 浦上 幸成(うらかみ こうせい)さん

代表取締役 浦上 幸成(うらかみ こうせい)さん

1971年10月31日神奈川県川崎市で生まれる。その後、長野市に引っ越してきて義務教育をとにかく元気に過ごす。17歳から建設業に興味を持ち東京で港の工事に携わり、21歳からは長野の株式会社高見澤で生コン圧送業のオペレーターとして働く。10年目に課長職をいただき、事業部単位の管理運営業務を学ぶ。建設リサイクル法の施行に伴い、33歳で現在の株式会社開渡の代表取締役に就任し、解体工事をメインとした会社を運営する。平成21年に長野市に産業廃棄物積替え保管業を取得。平成25年には産業廃棄物中間処理業を取得し、解体工事一通りの流れを自社で行える体制を作りあげる。

建設リサイクル法をきっかけに独立。従来の解体業者の枠を超えた対応で成長

――まずは社長のご経歴、会社の創業背景について教えてください。

若い頃に東京に行って、建設関係の会社で働きました。そこは新築工事というよりも改修や補修工事を主にやっていたところです。そこで色々と覚えさせてもらい、5年くらいしてから長野に帰ってきました。

帰ってきてからは地場の建設資材会社に入って、コンクリートポンプ車に乗りました。生コンを売るなど、東京にいる頃とはまた違った経験をさせてもらいましたね。

その後、建設リサイクル法ができたタイミングで、解体業をしていた5人の仲間を誘って、6人で独立しました。法案の施行もあって、今後は解体業の仕事も発展していくだろうと思ったんです。また、解体業に限らず、これまで自分が経験してきた経験は事業に生かせるという考えもありました。

 

 

――創業から今に至るまでどんなことをされてきましたか。また、その中で生まれた自社ならではの強みや特徴も教えてください。

とにかく新しいことをやってきたつもりです。創業当時の解体屋さんは、その場で建物を解体してトラックに積むことしかしていなかったし、その後の処理も、燃やす・埋めるしかできなかったんです。そんな中、自分たちはきちんと分別してリサイクル工場に持っていく解体業を始めました。大工さんがやっていたような切り離し解体など、そういったことも含めて全て自分たちでやるようにしました。

他にも、当時はまだ少なかった脱着式のコンテナを導入したり、ウォールソーやワイヤーソーなど、必要な道具も多数取り入れたりしてきた。「その作業もできますよ」と、他の解体業者ができない範疇まで請け負えるスタイルでやってきて、今があります。

そして「開渡に依頼すれば何でもやってくれるだろう」という認識が広がり、事業が発展してきました。

だから、新しいことを取り入れていくのが自分たちの特徴だと言えますね。最近、新しく導入した杭抜き機なんかもそうです。解体工事の一つの流れとして、杭抜きまでできるというスタイルを打ち出すために導入しました。長野では開渡が初めてなんですよ。

 

2019年に発生した豪雨災害。混乱する地域のゴミ問題を解消

――これまでの中で特に印象に残っているエピソードはありますか。

印象深いのは、2019年の台風19号による豪雨災害ですね。あの時、自分たちが住んでいるところはたまたま被害がなくて、子会社の開渡工業もなんとか大丈夫でした。でも周りはみんな水浸しになっていて。

会社には重機もたくさんあるし人員も揃っているので、すぐに役所に電話して「うちにできることがあったら言ってください」と伝えました。そして役所から「ゴミの処分場の整備をしてもらえないか」と依頼があったんです。社員には社員の仕事があるので、自分一人で重機を積んだトラックに乗って現地に向かいました。

まず篠ノ井に行き次は松代、最後に赤沼へ行きました。赤沼は行った時には無法地帯になっていて、もうゴミがあふれんばかりになっていました。でも住民の方はゴミを捨てないと生活できません。

役所はその場所を閉鎖しようとしましたが、地元の人たちに「ここを使えないと困る」と言われて、急遽、一時保管場所を作ることを提案しました。早速、役所の人と公民館へ行き、地元の人たちに説明し、分別方法を決め、受付係も役所から来てもらって対応しました。その時の状況を瞬時に判断し、最善策を見いだすことは開渡が一番とくいとすることです。

約1ヶ月間、昼夜問わず対応しましたよ。昼は地元の人たちが持ってきたゴミを積み込んで運び、夜は自衛隊の人たちの車にゴミを積み込んで山に持っていく。ゴミ捨て場を確保するために働き続けました。あれは本当にすさまじかったですね。

自分たちが解体や廃棄物の収集処理の事業をしていたから最前線で応援することができた。役に立てたと思うと、こういう仕事をしていて良かったなと感じましたよ。

みんながつらい中、本当に感謝してくれて、その言葉だけでもうれしかったです。

 

解体業は社会を循環させていく大事な仕事。ここで学べる多様な知識と経験の価値

――被災された当時は本当に大変だったと思います。きっと地元の方々は開渡さんのような企業がいてくれて良かったと感じられたのではないでしょうか。改めてこの業界の仕事の必要性や、実際に取り組む際のやりがいなどお聞かせください。

解体の仕事は本当に大事なんですよ。世の中、建物を作るばかりだといずれ溢れてしまいます。取り壊したり、適切に片付けて処理をしたりする人がいるからこそ、社会が循環していく。

解体業をするには、さまざまな技術と知識が複合的に必要です。

例えば、ビルを建てる時は型枠大工、鉄筋屋、生コン業者さんなど、いろんな業種が集まって初めて一つのビルができます。でも解体する場合は、その一つのビルを自社だけで解体します。当然そのためには、たくさんの認可や免許、技術が必要です。解体から処分まで、ワンストップで仕事ができる。そういった点ではやりがいがある仕事だと思います。

 

 

――開渡で働くことで、建築や建設の幅広い知識や経験が得られ、将来的に様々な仕事に携わることができるのは魅力的だと思います。ただ、ここで得た知識があれば独立していく人も少なくないような気がしました。

自分はそれでかまわないと思っています。開渡をステップアップするための通過点として捉えてもらって問題ありません。ここでは解体工事だけでなく、カッター工事や改修工事、修繕工事、土木工事などさまざまな経験ができます。

現場の一つ一つが全く違う職場のようなものですし、親方や施主さんなどさまざまな人と接する中で、対応力も身につくでしょう。そういう意味では、本当にいい人生経験になるんじゃないでしょうか。自分の引き出しをどんどん増やしていけて、技術だけでなく人としても成長できると思います。

もちろん、本音を言えばある程度重要な立場になった人には辞められると困りますよ(笑)。ただ、開渡は辞めてもまた戻ってくる「出戻り」も多いんですよね。色んなところを経験してきて、開渡に戻ってきてくれる人が多いのはうれしいことです。

 

一人で儲けるのではなく、みんなで儲ける

――働いている方の年齢層はどんな感じでしょうか。またどのような評価制度をされているのか教えてください。

開渡の従業員は20歳から70歳近い人まで幅広いです。年功序列の考えはなく、若い人でもやる気や技術があれば親方になれます。年上だから偉いということではなく、仕事の中では皆すべて平等に評価する制度です。

わかりやすく、仕事のできる人の給料が高い。そういう明確な指針があるので、みんな頑張ろうという気持ちになってくれているように感じます。

 

 

――資格取得支援の制度が充実していると聞いているのですが、具体的にどのようなことをされているのか教えてください。

業務に必要な資格を対象として、資格試験の費用は全額会社で出しています。再試験も含め、何回受けても会社が負担します。また、持っている資格に応じて給料も上がります。手取りが増えるとなれば、勉強するモチベーションが上がるかなと。

また、仕事に直接関係ない資格でも将来は必要になりそうだと判断したら支援することもあります。例えば最近の例だと、ドローンの免許ですね。今後、必要になるかもしれないと思ったので承認しました。

社員から「この資格を取りたい」という提案をもらい、それが将来的に必要になる可能性があれば認めています。

 

――その他、自社ならではの福利厚生や取り組みなどはありますか。例えば懇親会など、皆さんの交流の場づくりなどはいかがでしょう。

新発式を年に1回、9月に行っています。これは新年度のスタートを祝うものですが、そこではまず前年度の会社の成長を共有します。

業績が伸びたことを伝えればみんな喜ぶし、いつか自分たちにも還元されるという期待感を持ってもらえます。また反対に落ち込んだ時期があれば、それも隠さずにはっきり伝えます。そうすると、みんなで頑張ろうという意識を高めてくれるんです。最近は業績が伸びているので、みんな賞与を期待していますね(笑)。

ちなみに新発式ではビンゴ大会もするんですよ。会社で景品を準備して、全員に何かの景品が当たるようにしています。

 

開渡で一緒に人の役に立つ仕事をしませんか?

――最後に、今後の展望についてお聞かせください。これから開渡がどのように発展していくのか、社長の頭の中にある構想などをお聞かせいただけますか。

今後を見据えて、生き残れるよう取り組んでいきます。

自分が始めた頃は長野に10社くらいしか解体屋さんはいなかったんです。それが今では80社から100社近くまで増えています。ただ、これからは人口が減っていくため、従業員はどんどん入ってこなくなる。だから、これからは会社同士の統合が必要になっていくと思います。

解体工事の需要自体は、高度成長期に建てられた建物がたくさんあるので今後20~30年は仕事があると思います。こうした状況を鑑みて、今後も生き残っていけるやり方を探し続けていきます。

 

 

――若い世代や就職活動中の方々に向けて、一言お願いします。

この仕事は、とても人の役に立つ仕事であるとお伝えしたいですね。最近の若い人たちは、「人の役に立ちたい」という思いが強いように感じています。災害時にも力を発揮できますし、空き家を解体することは社会のためになります。社会貢献や環境保護の観点からも、解体業は重要な役割を果たしています。

単に建物を壊すだけでなく、その土地の新たな利用、可能性を引き出すことにもつながります。人に感謝されながら働きたい、社会の役に立ちたいという思いを持つ若い人たちにとって、きっと魅力的な仕事ではないでしょうか。

 

(取材・執筆:大久保 崇

 

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