高校生から防水工!そんな職人が営む地域密着型の会社『潤工業』を覗いてみた!
written by 斉藤彩
「防水工事」それは読んで字のごとく「水」を「防ぐ」工事のこと。
玉川上水駅から歩いてすぐ、住宅街の中に佇む洋食屋さんの向かいにあるのは、設立10年の防水工事屋さん、株式会社潤工業。
「防水工事の大事さを知ってもらい、職人を志す若者が増えてほしい」と話すのは潤工業の代表、森田潤一さん。今回は森田さんに潤工業流の若手社員の育て方や防水工職人として働く魅力を伺いました!
インタビュイー:森田 潤一(もりた じゅんいち)さん
株式会社潤工業の代表取締役社長。
20歳と高校生の男の子と、小学5年生の女の子がいるお父さん。
一見寡黙に見えるものの、小学校の通知表で「落ち着きがない」と先生に書かれるほど、何かを考えたり動いたりしていないと気が済まないタイプなんだとか。
32歳でいざ起業!すべてのはじまりは日当目当てのアルバイト!?
ーーーまず初めに、森田さんが防水工に出会ったきっかけを教えてください。
高校生のとき、アルバイトからこの仕事を始めました。
当時は今よりも最低賃金が低くて、だいたい日当7000円くらいの仕事がほとんどだったんでけど、防水工のバイトは日当1万2千円って書いてあったんですよ。
「ずいぶんいいバイトだな」って思ってすぐに応募したのがはじまりです(笑)
ーーーそこから起業に至るまではどんなお気持ちの変化があったんですか?
最初は全然起業するつもりはなかったんですよね。当時の社長もとても面倒見のいい人だったので、このままこの社長に付いて行こうと思ってたんです。
だけどこの社長、ちょっとお金にだらしないところがあって…。だんだんと不信感を抱くようになったのと、「もっと給料を上げたい」「クオリティの高い工事を提供したい」という思いが大きくなり、独立を考えるようになりました。
腕に自信があったので、一人だったら何とでもなるだろうと思ってたのもありますね。
知名度の低さに反した圧倒的な貢献度!『防水工』の存在意義
ーーー「防水工」を知らない人に向けて、これだけは知ってほしいと思うのはどんなことですか?
私たちの仕事って、絶対世の中に欠かせない仕事なんです。防水工がいないと、どこもかしこも雨漏りしちゃいますから。
だけど普通に暮らしているだけだとなかなか実感は沸かないと思います。台風や大雨のときにようやく気付くという方が多いので、知名度も低いのが現状です。
「あなたたちって何屋さん?水道屋さん?塗装屋さん?」と言われることもあるけど、全然違います。どの仕事も”皆さんの家を守る”という広い意味では同じだけど、雨による被害を未然に防ぐ、それは防水工事でしかできないことなんです。
ーーー「防水工事」ではどんなところを施工しているんですか?
家の中からは見えないかもしれませんが、外階段や外廊下、屋根、ベランダなど、屋外は全てです。
一般のお宅からマンション、学校、商店街まで幅広く携わってるんですよ!
ーーーとはいえ、大変なところも多いお仕事なんじゃないでしょうか?
そうですね、仕事なので大変なこともありますね。
例えば朝が早いこと。早いと5:30集合なんてこともあります。
材料で手が汚れるのも、最初は抵抗があるかもしれません。慣れちゃえば気にならないんですけどね。
だけど1番はやっぱり気温ですね。夏は暑くて冬は寒い!防水工だけじゃなくて、屋外作業の仕事はこれが一番大変なところなんじゃないかな。
ーーー暑さ寒さなどの大変さも覆すほどの魅力はどんなところにあるのでしょうか?
なんと言っても自分で施工した達成感。「終わったー!まじやっべー!」っていう、あの感じは想像以上だと思います。
防水工事って覚えることが多いんです。工事自体の手法もたくさんあるから、極めようとすると10年以上もかかる難しい業種だと思います。
だけどそれを自分で考えてできるようになったときの嬉しさというか、誇らしさみたいなものはかなり大きいですね。
あとは何より、お客様のためになっているという実感が得られること。
だいたい1か所の工事に2、3ヶ月かかるので、お客様とは資料を使って何度も入念に打合せをしたり、顔を合わせてお話したりするんです。
そんな風にして関係が深まっていくと、「お客様のために」というより「○○さんにもっと喜んでもらいたい!」っていう気持ちが強くなって、自然と力が入っちゃうんですよね。
お金をいただいていないところも「ここも念のためやっておこう」って勝手に直しちゃったり。
お客様の笑顔や感謝の言葉を直にいただけること、お客様の暮らしを守っている、という使命感を持って働けることは、この仕事ならではの魅力だと思います。
時代を経て便利になったツール。時代を経ても変わらない伝統
ーーー暑さ寒さが大変、とおっしゃっていましたが、対策はされていますか?
今まさに、暑さ対策のものをいろいろ買ってますね。
一番効果があったのは空調服!これ、着るのと着ないのでは全然違うんですよ!
あと若い人って「飲み物飲んでいいですか?」とか「休憩入ってもいいですか?」って言いづらいんじゃないかと思って、熱中症対策の心拍数を測る時計なんかも買いました。数値が一定を超えたら休憩に入ってもらったり飲み物飲んでもらったりできるんじゃないかと思って。
他にも水筒や氷嚢、ネッククーラー、ファンのついたマスク、小型の扇風機をみんなに渡したんですけど、「こんなのしてたらうっとうしくて仕事ができません!」って断られちゃいました(笑)
あと対策ではないけど、職長がドリンク代を出したりはしてますね。
昔から先輩がまとめて飲み物を買ってくれたりご飯を奢ってくれたりしてたので、後輩には僕らがやってもらったようにしたいなと。
ーーーその他に、働きやすさのために力を入れていることはありますか?
この業界って基本的に土曜日は仕事なんですが、うちは土日祝は全部お休みにしてるのと、休みたいときは前もって言ってもらえれば休んでいいことにしています。
大きい会社は「週休3日にするぞ!」なんて言っているところもあるんですが、さすがにそこまではできないですね。土日祝休みでも「もっと働きたい」って言う職人もいるくらいなので、週休二日くらいがちょうどいいかなと思ってます。
あとは大きなことはできないけど、お中元やお歳暮で届いたものは全部みんなに分けたり(笑)
社員のみんなには少しでも居心地の良さを感じてもらえたらいいなと思ってます。
ーーー雨が多いとお給料が減ると伺ったんですが、雨の日は皆さん何をされているんですか?
雨だと防水工事ができないので、お給料が発生しないんですよね。でもお給料は払ってあげたいので、防水工事以外の仕事をお任せするようにしています。
例えば1日中雨の日は、倉庫を整理したり、道具を磨いたり、打合せだけ参加したり。
他にも大家さん家の屋上を洗浄したり、我が家の草むしりや簡単な洗浄をしてもらうこともありますね。
買ったばかりの洗浄機をうちで試しに使ってみて「これすごくいいね!!」ってみんなで盛り上がったりしてます(笑)
求む、未来の仲間たち!潤工業、いい意味でギャップあります
ーーーこれから潤工業をどういう会社にしていきたいですか?
建設業界だとブローカーのような仕事を取ってきて流すだけの業者もいるんですが、そういう会社じゃなくて、若手を育てて、技術を伝えて、ずっと「施工店」である会社でい続けたいですね。
「立川の防水屋さんといえば潤工業だよね」って言ってもらえるような会社になりたいな。
ーーーそんな未来のためにどんな人を育てていきたいですか?
この仕事って、特に経験はいらないんです。だから挨拶ができて遅刻をしない人であればどんな方でも、と思ってます(笑)
細かい作業が好きな人とかは特に向いてるんじゃないかな。
僕、いつもみんなに「半分は自分のために動いて、半分は会社のために動いてもらいたい」と伝えているんです。
例えば免許を取るとして、それはもちろん会社のためにもなるし、今後の自分のためにもなるじゃないですか。そんな風に自分にも会社にもプラスになることを考えながら仕事ができる人と働けたら嬉しいですね。
もう一つ挙げるなら、お客様と同じ目線を持てる人。僕も「自分の家だったらこうしたい、こうしてもらいたい」っていうのはいつも考えながらやるんですけど、そういう考えは社員のみんなにも常に持っていてもらいたいです。
ーーーいつかの森田さんのように社員さんが「独立したい」と言い出したら応援しますか?
もちろん応援しますよ!みんな最初は「独立したい」って言ってるですけど、いつの間にか言ってこなくなるんですよね(笑)
独立だけに関わらず「こうしたらどうっすか」とか「こういう免許取りたいんですけどいいですか」って、もっと意見を言ってきてほしいんです。
人数もまだ少ないので、大きい会社に比べたら一人ひとりに時間をかけてあげられるし、「これを教えてほしい」って言われたら喜んで教えるのにな、って。
そういう人が今は少ないので、新しい仲間を増やして雰囲気を変えていけたらなと思っています。
ーーー最後に、言い残したことがあれば教えてください!
この業界って、怖いお兄さんやおじさんがいっぱいっていうイメージがあるでしょ?だから若者は特に入りづらいんだろうなって思うんです(苦笑)
だけどうちの職人さんたちはすごく真面目で優しい人ばかりなので、会ってみたら想像とのギャップに驚くんじゃないかな。
入りづらさはね、本当にめちゃくちゃあると思う。だけど建物がある限りなくならない職業だし、技術を身に付けていくほど稼げる職業の一つだと思うので、少しでも気になってる人はぜひ会いに来てほしいなと思います。
ーーーこの業界に若者が増える時代も近そうですね!森田さん、今日はありがとうございました!
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