Uターンでカフェを開業!地元で夢を追う人を応援する元地域おこし協力隊
written by 川西里奈
栃木県那珂川町、田んぼや山々が広がるのどかな風景の中に突如現れたのはおしゃれなカフェレストラン!お話を伺ってみると店主の磯野勇さんは東京からUターンし起業したのだそう。一体どんな思いからお店を始めたのでしょうか?
磯野勇(いそのいさむ)
栃木県那須郡那珂川町出身。20歳で上京しカフェやイタリアンレストランなど複数の飲食店に勤務。2018年にUターンし3年間地域おこし協力隊として活動。2021年に「Lighten up and Switch136」をオープン。
地元に作りたかった、元気になれる非日常な空間
__お店の名前「Lighten up and Switch(ライティンアップアンドスイッチ)136」にはどういう思いが込められているんですか?
磯野勇さん(以下、磯野):ライティンアップは明るく元気に、スイッチは気持ちの切り替え、つまりうちのお店に来ておいしいものを食べて明るく元気になってほしい、そんな場所でありたいという思いが込められています。最後の136は僕の名前「勇」からきています。
__たしかに天井も高くて内装も明るく、元気になれる雰囲気ですね!
磯野:この街にない非日常な空間を作りたかったんです。この場所は、元々カレー屋さんだったところをリフォームしました。地域おこし協力隊をやりながらずっとお店ができるところを探していて、昨年この場所を見つけて「ここだ!」と思いました。
▲開放感があり明るい店内。「家具や内装は友人に手掛けてもらいました」(磯野さん)。
__お店をやりたいというのはいつ頃から思っていたのですか?
磯野:もう20年ほど前ですね。僕は20歳からずっと東京へ行って飲食業界で働いていて、いつかは自分でお店をやりたいなと思っていました。同時に、那珂川町は人口が減少し少子高齢化が進んでいて、それをどうにか自分にできる飲食系の事業で元気にできないか、と考えていました。
__20年越しの夢が叶い、お店を開業してどうですか?
磯野:自分が思い描いたことが実現するのは楽しいです。もちろん好きなことができるのも、妻や周りの方々のサポートがあってのことですが、組織の中で働いていた頃と比べると、自分が中心となって進めていけるのでやりがいがあります。もちろん責任も大きいしむずかしいこともあるのですが、それ以上にワクワクすることのほうが多いですね。
__ご近所のお客さんも来るのですか?
磯野:町内のお客さんも多いです。ご近所の80歳のおばあちゃんがうちのハンバーガーを気に入ってくれて。いつもここでハンバーガーを頬張っている姿を見てると、なんだか嬉しくなりますよ。そうやって年齢問わずいろいろな方が来てくれるのは本当に嬉しいです。
小さいお子さん連れでもゆっくり食事ができるような場所をこの町に作りたくて、お子さん用の椅子を用意しました。ご家族でお越しになられるお客さんにものんびりと過ごしていただいています。
__外を見ると、本当にのんびりとしちゃいそうな景色が広がっていますね。
磯野:普段なかなかぼーっと景色を楽しむことがないと思うので、毎日見ている景色でもここに座って田んぼや山を眺めるのは、ちょっと非日常なのかなと思います。
メニューについても長い間悩みましたが、町にはそば屋さんとかお寿司屋さんといった和食系のお店が多いので、また違った選択肢が増えることで町の人たちが楽しくなればいいなと思い今のメニューにたどり着きました。
▲国産・地元食材にこだわったメニューはどれもボリューム満点。
地域おこし協力隊時代のつながりが基盤に
__東京から那珂川町に戻ってきたのはいつ頃だったのですか?
磯野:ちょうど4年前に地域おこし協力隊をやるためにUターンしてきました。
地元に地域おこし協力隊という制度があるというのを知り合いから聞いて、初めは興味がなかったのですが、よく考えたら20年も離れていて地元のことを何も知らないなと思ったんです。いつか地元でお店をやるんだったらもっと町のことを知る必要がある、そう思って地域おこし協力隊をやることにしました。
地域おこし協力隊になれば、地域の人たちとも交流を持つことができるし、町のために何かすることもできるので、そのあとで起業しても遅くはないと思いました。
__地域おこし協力隊の頃は、どういうことをしていたのですか?
磯野:町でとれた野菜やイノシシ肉など特産品のPRをしていました。首都圏のイベントへ出展して調理したものを販売することもありましたね。特産品や野菜、果物をメインに扱っていたので、農家さんとのつながりが増えて、その頃に知り合った農家さんの野菜を今はお店で使っています。
__お店のメニューは地元の食材にこだわっているんですよね。
磯野:できるだけこの地域の食材を使っています。直売所もよく行きますし、すべて自分で探して選びます。農家さんにも喜んでいただけますし、その日採れたものが今日や明日には出せるので何より新鮮です。
ハンバーガーは栃木の黒毛和牛100%のパティで、地元の工房で特別に作ってもらった米粉のバンズを使っています。鶏むね肉のチキンカツは、国産那須どりを使ったワンプレートライスです。
__那珂川町にUターンしてみて、改めてどんなことを実感していますか?
磯野:学生時代は気づいていなかったですが、いったん外に出て戻ってくると、特産品や人の良さといった魅力に気づかされますね。地域おこし協力隊をやっている中で、那珂川町の人のあたたかさや、おいしい食材や飲食店、温泉や観光名所など近辺にも地域資源がたくさんあるのだと知ることができました。
▲定番メニューの「L&Sハンバーガー」。テイクアウトもOK。
那珂川町で起業する人の背中を押す存在に
__これからやっていきたいことなどがあれば教えてください。
磯野:まだスタートしたばかりでこんなことを言うのはおこがましいですが、僕が今こうやって飲食業をやっていっている姿が、那珂川町で起業をしたい人のひとつのロールモデルになればいいなと思います。
もちろんそれはまだ先だと思いますが、自分のやりたいことや何か新しいことを始める人があとに続いて、町が盛り上がってくれたらとても嬉しいですね。
那珂川町で飲食店を始めたのも、一番は地域活性化のためです。こっちに戻ってきたいけど仕事がない、やりたいことが地元にないという人は少なくないです。そういった人たちの背中を押すことができる存在になりたいですね。僕のお店もいずれは人を雇えるくらいになり、町に雇用を生み出せたらと考えています。
農家さんとのつながりも大きいので、そこを活かして食育に関する取り組みもやっていきたいですね。自分で育てたものを食べるという体験は今の子どもたちにとってとても大事なことです。農家さんの場所を借りて作物を作り、調理して食べるというところまでを一貫して体験ができるような仕組みを作っていけたらと思います。
今後も飲食を軸に地域活性化につながる取り組みを積極的に行って、那珂川町を元気づけていけるようにがんばっていきます。
取材を終えて
田んぼや山に囲まれて絶品ハンバーガーを味わえるカフェはなかなかありません。ここに来ると気分がリフレッシュできる、そんな場所でおいしい食べ物を提供したかったという磯野さん。長年の夢が叶い、大きな目標である那珂川町の活性化に向けて挑戦していく今後が、とても楽しみです。
▼「Lighten up and Switch136」のInstagramはこちら!
https://www.instagram.com/lighten_up_and_switch_136/