「憧れのデザイナーから、頼れる現場のプロフェッショナルへ」──総社カイタックファクトリーで見つけた“ものづくり”の魅力と新しい夢の形
written by ダシマス編集部
岡山県に本社を構える総合アパレル企業、カイタックグループ。パジャマ、ジーンズといったファッションアイテムから雑貨、寝具まで幅広い商品を手掛け、確かな品質と時代のニーズへの柔軟な対応で成長を続けています。そんな同社グループの生産の中核を担うのが、総社カイタックファクトリー。デニムやジーンズの生産において、縫製から加工まで一貫して手掛ける工場は日本でここだけ。
同工場で管理課リーダーとして活躍する田中奈々(たなか なな)さんは、もともとデザイナーを志望していました。しかし、実際にものづくりの現場に入り、デザイナーとは異なる視点から商品価値を高められることにやりがいを見いだしています。
現在では工場長からの信頼も厚く、改善点も率直に進言できる存在として、工場全体を見渡せるポジションへと成長。その転換点に何があったのか。田中さんの15年の歩みをお伝えします。
管理課 営業・開発係リーダー 田中奈々(たなか なな)さん
岡山県倉敷市出身。総社高校普通科からカイタックグループの専門学校岡山ビジネスカレッジへ進学。同校を2009年卒業後、総社カイタックファクトリーに入社。勤続15年。さまざまな経験を経て、2021年にTES(繊維製品品質管理士)の資格を取得。休日は家族や友人とランチ、ショッピングを楽しんだり、愛犬(チワワ)と家でまったりして過ごしています。
デザイナーの意図を活かし、より良い商品をつくる。サンプル生産管理の仕事
――田中さんは現在、どのような業務を担当されているのでしょうか。
主にサンプル生産管理という業務を担当しています。各ブランドのデザイナーから届く仕様書をもとに、製品の縫製仕様や設計図を確認し、社内のパタンナーへと展開していく工程です。この作業は単なるチェック業務ではなく、より良い商品づくりのために様々な視点から検討を重ねていきます。コストや物性面はもちろん、デザイナーの意図を損なうことなく、かつ縫製しやすい仕様への変更を提案することも重要な役割です。
物性面での品質管理も欠かせません。例えば、ジーンズには独特の加工感を出すために様々な薬剤を使用しますが、生地に対して加工が強すぎると着用時に破損しやすくなってしまいます。そういった潜在的な問題をサンプルの段階で察知し、量産時にスムーズな生産ができるよう調整を行っています。
――総社カイタックファクトリーならではの強みはどんなところにありますか。
最大の強みは、縫製から加工まで一貫して行える生産体制です。一般的に縫製工場は縫製に、加工工場は加工にそれぞれ特化しているのですが、当社では両方の工程を一箇所で行っています。働き手としても、どちらの工程も深く理解し、経験できる環境があるのはありがたいですね。
こうした体制があるからこそ、各ブランドのデザイナーが工場に足を運び、現場を直接見ながら打ち合わせができる点も特徴的です。現場スタッフと直接相談できるため、デザイナーとの信頼関係も自然と深まっていきます。
現在は4名のチームで年間約1,000品番ものサンプルを手がけていますが、デザイナーと確かな信頼関係を築きながら、より良い商品づくりに励めることに大きなやりがいを感じています。
デザイナーから、ものづくりのスペシャリストへ
――田中さんが総社カイタックファクトリーに入社されたきっかけを教えてください。
もともとデザイナーを志望していました。当時はデザイナーという職業に対して漠然としたあこがれを抱いていて、仕事の実態を深く理解していたわけではなくて。
そんな中、専門学校の先生から「デザイナーを目指すなら、まずはものづくりの現場を知ることが大切」とアドバイスをいただき、工場での仕事に挑戦してみようと考えました。
――専門学校時代はどのような経験をされていたのでしょうか。
カイタックグループが運営する岡山ビジネスカレッジのファッションクリエイターコースで学んでいました。年に一度開催されるファッションショーが最大のイベントで、衣装制作はもちろん、音楽や演出、ヘアメイクまで、学生主体でトータルプロデュースを行います。学年を超えた交流の中で、ファッションの多様な側面に触れられた貴重な経験でしたね。
――そもそも、デザイナーになりたいと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
純粋にファッションが好きだったから、ですね。
学生時代は「自分のブランドを持ちたい」という夢を描いていました。でも、実際に工場で働き始め、ものづくりの現場に触れていくうちに、新しい発見がありました。入社当初は現場での仕事を通過点として考えていましたが、実際にものづくりに携わってみると、その奥深さと面白さに引き込まれていったんです。
今では、デザイナーと工場をつなぐ橋渡し役として、より良い商品づくりに貢献できることにやりがいを感じています。デザイナーの意図を理解しつつ、工場の視点から提案できる立場だからこそ、デザイナーとの信頼関係も深められているなと。
――この仕事の魅力を感じる瞬間はどんな時ですか。
憧れのブランドの商品開発に関われることは、とても刺激的な経験です。それに世に出る前の最先端の情報に触れられることも面白さの一つですね。
また、自社ブランド「YANUK」の成長を間近で見られることも大きなやりがいになっています。L.A.発祥のデニムブランドYANUKはパターンへのこだわりも特徴です。美しく見えるシルエットはもちろん、履き心地も重視しています。
例えばウエスト部分には伸縮性を持たせ、かがんでも背中が見えないよう体の動きに追従する工夫を施しています。
最初は小規模なブランドでしたが、こうしたこだわりが評価され、今では雑誌やテレビ、SNSなど様々なメディアで取り上げていただけるようになりました。
街中でYANUKを履いている方を見かける機会も増え、「一度履いたら他のパンツには戻れない」といったお客様の声も頂戴するようになってきました。ものづくりに携わる者として、こんな嬉しいことはありません。
支え合い、学び合う。風通しの良い職場環境
――続いて、田中さんが働く職場の雰囲気についても教えてください。
明るく真面目な社風が特徴です。特に私が所属する部署は、20代の若手から50代のベテランまで幅広い年齢層のスタッフが在籍し、休憩時間には和気あいあいと談笑する一方で、業務時には全員が切り替えてしっかりと仕事に集中する。そんなメリハリのある雰囲気の中で働いています。
――日々の業務はどのように進められているのですか。
チームワークを重視した運営を心がけています。私が所属するチームでは毎朝ミーティングを実施し、その日の業務内容や課題を共有。チームリーダーとして、メンバー一人ひとりの状況を把握し、繁忙期には業務を適切に振り分けることで、特定の担当者に負荷が集中しないよう配慮しています。
また、各部門のリーダーが集まる定例会議も設けられており、部門を超えた連携も活発です。春の新入社員歓迎会や年末の忘年会など、全社行事も大切にしており、約100名の社員が一堂に会して普段は接点の少ない部署のメンバーとも交流を深める機会があります。
――そのようなコミュニケーションの活性化以外にも、会社として大切にしていることはありますか。
社内研修が充実していることも特徴の一つです。新入社員研修から中堅社員研修、キャリア昇進に向けた主事補研修など、キャリアステージに応じたプログラムが用意されています。また社外セミナーへの参加機会も積極的に設けられ、自己啓発の機会が豊富です。
資格取得のサポート体制も手厚く、受験料や更新料の補助制度があります。私自身、3年前に繊維製品品質管理士(TES)の資格を取得しましたが、会社のバックアップのおかげで挑戦することができました。
また、通信教育も活用し、日々の業務だけでは得られない知識やリーダーとしての心構えなども学んでいます。こうした環境があるからこそ、常に新しいことにチャレンジし、成長し続けられていると感じています。
次世代のロールモデルとなり、誇れる職場をつくる
――田中さん自身が仕事をする上で、大切にされていることを教えてください。
私が常に意識しているのは「全体最適」という考え方です。様々な部署を経験してきたからこそ、一つの部署だけでなく組織全体を見渡した判断ができると考えています。
例えば、縫製工程に大きな負荷がかかりそうな場合、最終工程の検査・仕上げや加工工程で一部作業を担えないか検討するなど、部門間の協力を通じて全体のパフォーマンスを高められるよう心がけています。
――これまでの経験を活かして、今後はどのような職場にしていきたいとお考えですか。
その思いの背景には、私自身が多くの先輩方から支えられてきた経験があります。特に女性の先輩方の存在は大きく、結婚や出産を経験しながらもキャリアを重ねている姿は、私たち後輩の大きな励みとなっています。
実際、当社は産休・育休制度が充実しており、復帰後も時短勤務を選択できるなど、ライフステージに応じて柔軟な働き方が可能です。縫製現場は特に女性スタッフが多いので、こうした制度が整備されているのは大きな強みだと感じています。
――最後に、これから一緒に働きたい方へメッセージをお願いします。
目標に向かってコツコツと努力できる方、新しいことにチャレンジする意欲のある方と一緒に働きたいですね。もちろんファッションやジーンズが好きな方も大歓迎です。未経験の方も心配はいりません。縫製は機械化も進んでおり、新人でもミシンを扱える環境が整っています。
何より大切なのは「ものづくりに興味がある」という気持ち。当社は縫製から加工まで、一つの屋根の下でものづくりの全工程を完結できる国内唯一の環境です。さまざまな可能性に挑戦できるこの現場で、一緒に新しい価値を生み出していける仲間との出会いを楽しみにしています。
(取材・執筆:大久保 崇)
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